下見

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キラキラと太陽の光の粒が、空から降ってきた雪の結晶に反射して輝く。 ホットドッグを両手に持ちずんずんと前を歩く彼女は、ご自慢の豊かなポニーテールを揺らしながら振り向いた。 「ちょっと、何ぼさっとしてんのよ早く行くわよ」 「あの・・・さ・・・、ひとつ確認していいかな?」 彼は寒そうに白い息を吐きながら片手で頭を抱えた。 彼の言葉に彼女は眉を顰める。 「何よ」 「・・・毎回思うんだけどコレってさ・・・デー」 「トじゃないわよ。デートの下見だって何回言ったら分かんの?」 彼女の言葉に彼はいよいよ両手で頭を抱えた。 「ちょっと待って!? おかしいと思ってたんだよね、2年前から! 君と付き合いだして初めてのデートで、ウキウキしてたら、君次の日にまた同じところ行くからさ、僕ビックリしたんだよね! 何で? って聞いたら君なんて言ったか覚えてる!?」 「覚えてない」 「なんっ・・・でだよ! デートの下見だって言ったじゃん! 何!? デートの下見ってなに!? それ普通彼氏じゃない誰かか、1人で行くよね!? 何でデートの下見彼氏と行くのさ! おかしいでしょ!?」 彼が言うと、彼女は逆ギレした。 「はぁあ!? 何であたしがあんた以外とどっかに出かけなきゃなんないのよ! 絶対嫌よ!」 「じゃあせめてデートの下見無しでデートしようよ! 昨日と同じプランじゃ嫌だよ僕!」 「いっちょ前に口答えしてんじゃないわよ! 1回リハーサルしないと緊張して喋れないでしょ!?」 「リハーサルってなに!? リハーサルってなんだよ! 本番じゃあ緊張して僕と喋れないってことかよ! 2年前から付き合ってるのに!」 「そうよ悪い!? あんたがいると心臓がぎゅっとして意図してないのにキュンキュンなって痛いのよ!」 顔を真っ赤にして言い放ち、彼女は乱暴にホットドッグを彼に押し付け、何かをカバンから取り出し彼に押し付けた。 「ん!」 「・・・何・・・これ?」 キョトンとする彼に彼女は小さな紺色のケースを開く。 中には銀色に輝く指輪。 「わっ、私と結婚してください!!」 「まさかの逆プロポーーーーーズ! ていうかこれリハーサル!? てことは明日もあるの!?」 「何よ! あったらなんなの!?文句あるの!? 文句なんて受け付けないわよ! 受け付けるのは"はい"か"YES"の返事だけよ!」 「それ実質選択肢ひとつだよ~~~~」 半年後、彼らは結婚式のリハーサルを経て結婚した。
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