生きる訳 死ぬ理由

2/30
前へ
/30ページ
次へ
本当に、そうなら良いのに。例えば、同じクラスにとびっきりのいじめっ子がいて、私がそのえじきになって、苦しめられて、それで学校に行きたくない、とか。 私は、特別に友達が多かったわけでもないが、人並みに仲の良い友人がいて、クラスにそれといっていじめっ子も思いうかばない。 それなのに、私は学校に行きたくない。 なぜなのだろう、自分でも本当に良くわからないのだ。 だから、母が私をなぐさめてくれるたび、私は余計にむなしくなった。 ぼーっとしながら、てき当な服に着がえて、部屋を出ると顔を洗い、下の階のリビングにおりた。 ダイニングのテーブルの上に、何かが置いてあるのが目に付き、まだとかしていなくて、ねぐせがついたままのかみを手ぐしでとかしながら、そちらへと向かった。 <お母さんは会社に行ってきます。今夜はおそくなるかも知れないけれど、心配しないでね。朝ご飯、おにぎり食べてね。お昼は、てき当に食べておいてね。今日も愛してるわ。お母さん> というメモと一緒に、ラップに包んだ三角形のおにぎりが二つ置いてあった。 何となくメモをポケットに入れて、おにぎりを両手にそれぞれ持つと、自分の部屋に持っていき、ベッドの上で食べた。 私の好きな、サケと梅の味だった。 ゆっくり食べたつもりだったが、それでも20分もかからなかった。     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加