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夕暮れ時から降っていた雨は、木々が鬱蒼と生い茂った森をしとどに濡らし夜半過ぎ頃には去っていった。
雨は好きではない。と、マリユスはベッドの上から窓の外の木々を見やり、ため息をつく。
壮年を過ぎ、初老にも見えるマリユスは、いつ頃からか雨に気分を左右されるようになっていた。雨が降る前触れは決まって頭重感と憂鬱な気分に襲われる。降っている間は肌にまとわりつく湿気にうんざりしていた。
「やっと止んだか……」
ため息交じりに呟いた時、外から無数の鳥たちの羽ばたきと鳴き声が聞こえてくる。
「なんだ?」
おそらく屋敷の周りに棲みついているカラスたちだが、こんな時間に騒ぐのは珍しい。いつまで待っても止みそうもない鳥たちの喧騒に、マリユスは眉をひそめた。
屋敷の主の眠りを妨げるつもりであれば、一羽も残さず捕まえて丸焼きにしてしまおう。
雨上がりの頭痛が残るマリユスは、眉間にしわを寄せてベッドサイドの燭台を手にとり、マントを羽織った。
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