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屋敷に戻ったマリユスは急ぎ暖炉に火を入れ、湯を沸かした。
一晩眠れる場所を借りるだけでいいという青年から雨水の滴るローブを剥ぎ取り、暖炉の前に置いた椅子へかけ、手を引いて風呂場へと連れていく。ローブの下は、どこにでもいる村人の服装だった。近くの村から出てきたに違いない。カラスにつつかれて傷になっていないかと気になっていたが、ローブのおかげで青年の肌は綺麗なままだ。
薄暗い浴室に佇む青年は所在なさげに俯いて、腕の中に抱えたままの包みを大事そうに抱え直した。その間も浴室の中央に据えた白い陶器製のバスタブからは温かな湯気がせわしなく逃げていく。
「湯が冷める。さっさと脱げ」
マリユスは青年から包みを預かろうと手を伸ばした。
「っ……!」
ところが、彼は肩をすくめて包みを守り、マリユスを拒絶する。
「少しだけ預かろうとしただけだ」
青年は包みを抱きしめ、すまなそうに視線を彷徨わせた。
「……すみません。どこかへ置かせていただけませんか?」
大事なものなのか、彼はその包みに触れさせようとしない。
「この椅子の上に置いておけ」
部屋の隅にあった椅子を引き寄せてやると、青年は素直にそこへ包みを載せる。両手が自由になった彼は湿った服を脱ぎ始め、若く引き締まった肌を惜しむことなく露わにした。
マリユスは彼をバスタブの中へ誘い、蝋燭の明かりを受けて柔らかく輝くブロンドに湯をかけて洗ってやる。青年の髪は、日に焼けることの多い村人のものとは思えないほど繊細で艶やかなものであった。
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