第1回「いとしき思い出」

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「ごめんね。私、何度か転校して、色んなクラスに入って……結局『クラスで仲良く』とかよく分かんなくなっちゃって」  よく分からないというか、本心でいえば『興味が無くなった』が近い。そこまでは言わなかった。ただ、転校生の隣の席になったのに、お決まりの質問や会話をせず本を読み始めた様子。トイレで内心を聴かれてしまったことと、自分も退屈だと呟いてきたこと。そうしたことから、ふと"普通の人"には話さないようなことも、聴いてほしくなっていた。今更、取り繕っても意味がないと思ったということもある。  清内路さんが少しだけ振り返って、聴いている姿勢を示してくれたので、久留美は続けた。 「学校のクラスって、自分たちで選んだ場所じゃないじゃん。  何か目的があって、そのために集まっているわけでもないし。学級目標とか決めるけど、あれは『クラスが在るために作る目標』で、同じ目標を持つ人たちが集まってクラスができたわけじゃないし」 「……1階は3年生の教室が並んでいるわ。2階で社会科研究室があった場所は廊下で、他の棟に行き来できるのは1階だけ」  清内路さんは、久留美の話の腰を折らない程度のタイミングで案内を挟み、しばらくして「続けていいわよ」と言った。 「……ありがとう。  それでね、ネットゲー……あ、インターネットで繋がって、人とゲームとかしていると、目的が同じなんだよね。ゲームの中でやりたいことが同じ人とか、チャットとかで話が盛り上がって分かりあえる人。しかも、それを何千人・何万人っていうユーザーの中から探せるんだよ。  そういう場があって、私たち中学生でも大人と変わらないように参加できるのに、何がなんでも"学校のクラス"で、仲良さそうに上手くやってかなきゃいけないとか、そういうふうに思えなくて」 「そう」  校舎は大きく分けると、普通教室棟、管理棟、特別教室棟に分かれているとのことだった。その他に体育館などもある。 「あとね……私、小学校の頃に、とても仲のいい友達がいたんだ。でも、会えなくなっちゃって……」
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