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けれども、いざマイクを前にすると、何を話せばよいのか、久留美は分からなくなっていた。
「ええと……」
「ルミちゃんとラジオをやりたい! って思ってもらわなきゃいけないから」と言って、しぃちゃんは収録ブースに入ってこなかった。防音ガラスの向こう、調整室に座っている。
台本などの事前の準備は何もないので、お題は「フリートーク」になった。
しかし、フリーでトークしてと言われて、すぐに言葉が出てくるものではなかった。
学校での日常は……教室の隅の方で、保護色になった気持ちで無難に過ごしているだけだ。
家での趣味は……ひたすらオンラインゲーム。
そんな自分の話を聴いて面白いと感じてもらえるとは思えない。むしろ、マイナスの印象なのではないだろうか。
それでも、何か喋らなくてはならない。
しかも、その内容を面白いと感じてもらわなくてはならない。全国大会へ行くためには、ほとんど身内しか聴いていないこの部のラジオを、もっとたくさんの人に聴いてもらえるようにしなくてはいけないのだ。
それができなければ、久留美は しぃちゃんとラジオを続けることができなくなる。離ればなれになるのだ。
だから清内路さんにもこの部に入りたいと思ってもらなくてはいけない。
番組を聴いた人が、面白い、聴きつづけようと思ってくれるような内容を。清内路さんが、面白い、一緒に番組をつくろうと思ってくれるような内容を。
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