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急に表情が変わって。
真っ直ぐな眼差しで見詰められて。
胸が、締め付けられるくらい苦しくなった。
だって、アツ以外の人を好きになるなんて・・・そんなの、絶対、無理に決まってる。
分かっていて、なんで、彼はそんな哀しい事を僕に頼むの?
「あと、未央。これからは、俺以外の男に肌を見せるのを控えて欲しい。アツと一緒に風呂に入るのも禁止だ」
「佳大さん、言っている意味が・・・」
「さっき、父が言ったと思うが、未央はいずれ俺の『妻』になる。自分でいうものアレだけど、嫉妬深くて、独占欲が強いんだ。未央は俺のモノ――独り占めしたいと思うのはごく普通の事だと思う」
さらりと口にしていたけど、ものすごく恥ずかしい事をストレートに言われた様な・・・。
「アツにも、未央と一緒に風呂に入るな、そう言っておいた。人のモノに気安く触るなとも。だから未央も、約束を守るように、いいな」
怖い顔で、念を押され、頷くだけで精一杯だった。
彼は、気色悪くないのだろうか。
男性と女性の性-ー両方の性を持つ僕を。
こんな中途半端な、できそこないのどこがいいの?
ふわりと、彼の大きな掌が、僕の手に触れてきて。
遠慮しがちに、包み込むように握り締められた。
「父に言われたからではない。興味本意でもない。ただ、家族に虐げられる君を救いたいと思っただけ。気が付けば、好きになっていたんだ・・・。もう、怒ってないから・・・」
「・・・あ、あの・・・」
何か言わなきゃ。
頭では分かっているけど、言葉が見つからない。
「佳兄、いいかな?部屋に入っても」
あっ、これ!!
アツの声だ。
慌てて、佳大さんの手を払い除けた。
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