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「篤人様も嬉しいでしょう。未央ちゃんが、佳大様の奥様になられるんですよ」
え!?アツ!?
嘘!!
雅枝さんの視線の先を辿ると、むすっとしたアツが目に飛び込んできた。
「すごい音がしたから、様子を見に来たんだけど、お邪魔虫のようだね」
ぷいっと、顔を逸らして行ってしまった。
「アツ、待って?」
追いかけようとしたら、佳大さんに腕を掴まれた。
彼もアツ同様、むすっとした表情を浮かべていた。
しかも、目が座っていた。
「少しは自覚したら?自分の立場。未央のお父さんの会社に融資しているの、俺なんだよ。2年前から、父の代わりに俺が出すようになった。未来の花嫁の為なら、幾ら出しても惜しくないからね」
雅枝さんが、割れた皿を箒で一ヶ所に集めてくれていた。
僕たちの会話が聞こえているはずなのに、聞いてない振りをしてくれている。
「もうじき、弟が産まれるんだろう?いくら、憎い継母の子でも、血の繋がった弟は可愛いだろう。産まれて早々、路頭に迷うかもしれないよ」
「僕を脅すんですか!?」
「そんな訳ないだろ。未央の可愛い花嫁姿が早く見たいだけだ」
「こんな気色悪い僕の、どこが、いいんですか?」
僕の気持ちを思いやる、優しさの一欠片も、彼にはない。
悔しさと、悲しさがこみ上げてきた。
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