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「ガーランドでは、国王様を始め、王族の皆さんが、未央ちゃんが来るのを首を長くして待っているのよ」
着替えを手伝ってくれながら、先生がそんな事を口にした。
「ここ数カ月、ガーランドで結婚式を挙げる日本人カップルが急増して・・・観光客も前年度の倍になったのよ。帰化してまで尽力するご主人に、国王様自ら会いに行って、お褒めの言葉を述べたみたい。その席上で、褒美をやるからなんでも言えって言われて・・・何て答えたと思う?」
「えっ!?」
いきなり聞かれ返答に困ってしまった。
「日本に帰国した身重の妻を今すぐにでも迎えに行きたいって即答したみたいよ。嘘をつく訳にはいかないから事情を正直に話したみたい。そしたら、国王専用機を貸してやるから、すぐに迎えにいきなさいって国王様がおっしゃったみたいよ。帰国にあたって日本政府へも御自ら配慮を頼んだみたい」
あまりにもスケールの大きい話しについて行けず、目をパチパチしてしまった。
「みんなに愛されて羨ましいわ」
「そんなことないです}
ぶんぶんと首を横に振った。
髪をとかしてもらい、唇に薄紅色のリップを少しだけ塗って貰った。
「うん、可愛い」
「ありがとうございます!!」
先生に頭を下げて、椅子から立ち上がろうとした時だった。
『・・・み・・・お・・・』
浴室から、父の声が聞こえてきたような気がしたのは。最初、空耳かなって思ったけど・・・
ドタン、バタン!!
物凄い音と共に浴室のガラス戸が荒々しく開いて、姿を現したのは-ー間違いなく父だった。
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