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「奏人、起こさないでよ」
「えぇ--‼抱っこしようとして思って、急いで帰って来たのに」
「起きてからでもいいでしょう」
ぷにぷにの柔らかな頬っぺたをツンツンするアツ。自然と笑みが溢れる。
そして、奏人を溺愛してやまないのがもう一人。ネクタイを緩めながら、大急ぎで帰宅してきたこの家の主である佳大さんだ。
「奏人、ただいま~~‼」
部屋に入るなり、アツにしーーぃと言われ、少しぶすくっていたけど、奏人の寝顔を見た途端、デレデレの笑顔になった。
今、僕はある決断を二人から迫られている。
アツからは、奏人のパパとして、これからも変わらぬ愛を告げられ、佳大さんからは、離婚する気は一切ない、戸籍上自分の子になっている奏人をこのままにしておきたいと告げられた。
『決めるのは未央自身だ・・・』
二人から、奏人のパパをどちらか、選ぶように迫られている。
アツを選べば、この家を出て行かなければならない。経済的にも生活力がない僕らは、そうなると日本に戻る他ない。佳大さんを選べば、今まで通りの生活が保証される。でも、そうなると、アツを父の二の舞いにしてしまうかもしれない。
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