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三脚に取り付けるところがあったから7棒を取り付けてみる。すると、見たことのある望遠鏡の形になった。
「これで…、ここから覗く」
ヒナの方を見やると、喜んで拍手してくれていたので、照れた。
「凄い、そうやって使うのね」
その声が、棒読みに聞こえた様な、気がしないでもないような。
「そうね、とりあえずは夜ご飯のことを考えましょ。クラッカーも無くなったことだし」
「ご飯はいつもどこから?」
「それは、スーパーマーケットでしょう」
ヒナは一度自転車の方を見やると、「まあ、そこまで遠くもないわよね」と一人呟いた。
「歩いていきましょう、ええと、あなたはなんて呼べばいいかしらね」
「うーん…」
そこで、先程組み立てた望遠鏡が目に入る。
端の方に少し汚い字で「ハルコ」と彫られていた。前の持ち主だろうか?
考えても仕方ないだろう。
「じゃあまあ、ハルコで」
「却下ね。ハルで」なぜか即否定された。
「ええっ…」「よろしくね、ハルさん」
この時、私は初めてハルとなった。
病院から来た道とはまた別の方角だ。
「この世界には、北とか南って、あるの?」
「そりゃあるわよ。誰も使わないのは確かだけど」
日没はまだ遠く見えた。
「さっき言ってた、どーんって?」
「どーん?」「あの、人がいなくなった理由の」
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