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食べたいもの、と聞かれても特に何も浮かんでこない。というか、自分が何を好きだったのかも覚えていないのだから。
「おまかせでおねがいします」
店内を見回す。生鮮食品は腐ってしまったのか、食べ尽くしてしまったのか、もうない。代わりに倉庫から出してきたのであろう、大量の缶詰が置いてあった。
意識して聞くと、店内放送さえ流れている。「ご来店ありがとうございます、本日はお客様感謝デー!ポイント二倍!…」
私はいそいそとお菓子コーナーへと足を向ける。ポテトチップス、柿の種…。お菓子は欠かせないだろう。
見るとどれも、賞味期限はギリギリだったのだが。
「お菓子か。いいね。もう何日も食べてないや」いつの間にかヒナがいた。ショッピングカートを転がしていた。
「ポテチ、何味にする?」「のりしおに決まってるでしょ」ヒナはのり塩党の人間のようだ。
「ところで料理長。本日の献立は」
「ふっふっふ。秘密よ」
しかし意図せず、カゴにレトルトカレーが見えてしまった。無視するのも優しさである。
目を逸らした先に、アイスが見えた。是非とも、とも思ったがこの暑さでは溶けてしまうだろう。残念だが諦める。
ヒナがショッピングカートを持ったままお店の外に出ようとしたので、慌てて止めた。
ヒナが笑う。「誰にお金を払いましょうか」
「あっ…」耳が赤くなる。
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