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ウィーンと、ドアが開いた。
大きな入道雲の下を、ショッピングカートがカラカラ転がる。それに釣られるように、私達は歩く。
「帰りは、また別の道を通るからね」
「了解です。でも、なんで?」
「ゴミを捨てないと」
はて。誰もいないのであれば、ゴミなんてそこらに捨てればいいのでは?と一瞬思ったが、あまりに倫理観が欠けていると反省した。
行きの道は舗装された車道を歩くことが多かったのだが、周りに見えるのは、家、家、家だった。住宅地なのだろう。
「この家も、誰もいないんだね…」ふと頭の中が漏れてしまう。
「そうね。ここらに住んでた友達もほとんどこの星を出てしまったわ」
「そっか…」
頭の中で何かが引っかかる。
「今、『ほとんど』って言ったってことは、まだこの街にいるんだ」
ヒナが一瞬しまった、といった表情を見せた。
「そうね…、また、紹介するわ」
「どんな人?」
「優しくて…、物知りで、一緒にいてとっても楽しい人よ」
「ほほう?」言い方から察するに、多分男性だろう。
訝しげな目でヒナを見ても、彼女に自覚は無いようだった。
道の端に大きな箱が見えた。ヒナが立ち止まり、カバンを探る。
「これこれ」と中くらいのレジ袋を取り出し、箱にぶち込む。
ヒナがカバンを背負う。
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