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「さあ、帰ろう」
「ゴミの収集は、誰がやってるの?」
「そんなことする人もういないわよ。もう、全部自動」
「すごいね、それ」
「発電もガスも全部自動よ。石油をどこか遠くから、汲んできてるみたい」
ヒナはもう近くに見えるドームを見上げる。
「あれがその拠点よ。電気もガスも水道も、あの中で管理されてる」
ドームに反射する日の光がやけに赤く見えると思ったら、もう夕暮れだった。
私達が最初に出会った場所は、ドーム前の広場だった。そこには、焚き火のあと、自転車を置いていったはずだったのだが…
「やあヒナ、と…どちら様だ?」
こちらのセリフである。そこには見慣れぬ、おじさんとお兄さんの間の様な人がいた。見慣れぬ、と言ってもまだ目覚めてから二人目の人間だったのだが。
「この子はハル。記憶がないみたい」
「それはそれは。俺は、エイだ。ヒナの彼氏をやっている」
ギョッとした目でヒナを見やると、彼女は慌ててエイさんを蹴った。
「年の差が過ぎるわよ。身の程をわきまえたほうがいいと思うわ」
なぜか心の奥で安心してる自分がいた。それはそうだ。ヒナが見た目20歳前後くらいなのに、エイさんは30半ばに見える。お金持ちでもなさそうだし、なんというか…
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