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くもりガラスの窓ははめ殺しになっていて、外の様子はわからない。とりあえず、この部屋から出れば誰か事情を教えてくれる人がいるだろう。
床を見渡すとスリッパがあったので、履いてドアを開けた。
通路の明かりは不健康なくらい白い。
とても、とても静かな病院だった。図書館の、柔らかい静けさとは違う、意味どおりの、静けさだった。耳がどうにかなりそうだ。
通路の先には、ひときわ明るく輝く部屋があった。ナースステーションだ。
「すいませーん…?」
ナースステーション、だよね…?
入り口の札を見る。『ナースステーション』
部屋を覗く。少なくとも、誰も、見えない。
「すいません、、?」
中に足を踏み入れる。看護師さんが使う机らしきものがいくつかあったが、どれも整理整頓され「尽くし」ていた。
気がつけば私はその部屋を出て、向かいにあったエレベーターの下ボタンを連打していた。
頭の中に一つ仮説が浮かぶ。「誰もいない」
脳内イメージでそれを蹴り飛ばす。
そんなこと、考えたくもなかった。頭を振る。
他の可能性を探そう。他の病室は?
そうだ、他の病室…
「チーン」
少し迷ってから、結局エレベーターに乗ってしまった。
エレベーターは安心できる。
グオングオンと鳴る雑音は、異様さを感じさせない。
安心に浸っていたら、思ったより早く一階へと着いた。
「ここなら…」
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