おはよう

2/23
前へ
/116ページ
次へ
くもりガラスの窓ははめ殺しになっていて、外の様子はわからない。とりあえず、この部屋から出れば誰か事情を教えてくれる人がいるだろう。 床を見渡すとスリッパがあったので、履いてドアを開けた。 通路の明かりは不健康なくらい白い。 とても、とても静かな病院だった。図書館の、柔らかい静けさとは違う、意味どおりの、静けさだった。耳がどうにかなりそうだ。 通路の先には、ひときわ明るく輝く部屋があった。ナースステーションだ。 「すいませーん…?」 ナースステーション、だよね…? 入り口の札を見る。『ナースステーション』 部屋を覗く。少なくとも、誰も、見えない。 「すいません、、?」 中に足を踏み入れる。看護師さんが使う机らしきものがいくつかあったが、どれも整理整頓され「尽くし」ていた。 気がつけば私はその部屋を出て、向かいにあったエレベーターの下ボタンを連打していた。 頭の中に一つ仮説が浮かぶ。「誰もいない」 脳内イメージでそれを蹴り飛ばす。 そんなこと、考えたくもなかった。頭を振る。 他の可能性を探そう。他の病室は? そうだ、他の病室… 「チーン」 少し迷ってから、結局エレベーターに乗ってしまった。 エレベーターは安心できる。 グオングオンと鳴る雑音は、異様さを感じさせない。 安心に浸っていたら、思ったより早く一階へと着いた。 「ここなら…」     
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加