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焚き火が好きだ。
無論、不便だからしかたなく、ではなく積極的に好きなのだ。賞味期限の切れたマシュマロを金串に刺し、火にかざした。電気はある、ガスもある。インターネットも無いことはないが、今やその原型はない。
パチッ、と焚き火が音を鳴らす。
目の前には大きな丸い建物があった。ヒナは、虚ろな目でそれを眺めていた。
「あと六日だからね…」
と一人呟くと、マシュマロが少し溶けている事を確認する。
金串を火から遠ざけ、何も刺さっていない方を地面に突き立てると、カバンからクラッカーを取り出した。
1枚目のクラッカーにマシュマロを乗せ、2枚目でそれを挟み込む…
一口食べると、手元にあるアイスコーヒーを啜った。
ヒナはやはり依然として虚ろな目で空を見上げた。
金串を手に取り、二つ目のマシュマロを突き刺す。もう何日だろう。ずっとこれを食べ続けているような。
カバンからクラッカーを取り出す。
「あれま」
さっきのが最後の二枚だったようだ。しかしまあ気にすることはない…、この街にはヒナが七日間で食べられないほどのクラッカーがあるはずだ。
ヒナは重い腰を上げて、スーパーに向かうことにした。
「んっしょ…」
立ち上がると、見慣れないものが見えた。
「…?」
ものにしては、よく動く…?
「嘘っ…」
遠くに見えたのは、同じような目をしてこちらを伺う少女の姿だった。
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