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遠くに見えたのは、同じような目をしてこちらを伺う少女の姿だった。
遠くに人が見えた喜びで、今にも踊りたくなりそうだが、人目を気にするのと、少しの警戒心でとどまる。
それにしても、お腹が空いた…
病院から体感30分は歩いている。暑さもあり取り敢えず飲み物が欲しいところだ。
あの人が悪い人で無さそうだったら、色々と事情を聞いてみることにしよう。
夏なのに変な人だな、と思った。その人は焚き火をしていた。病院には電気がついていたはずだけど…
いや。それよりも、この街の事を聞くのが先だろう。
二人は互いににらみ合ったまま、遂に5メートル位の距離まで近づいた。
先に口を開いたのはヒナだった。
「おはよう」
「おはようございます…?」
おはよう…ということは、今は朝なのだろう。
取り敢えず初対面の人にすることといえば一つだろう。
「えーっ、あの、あなたは?」
その少女の目にはほんの少しだが、動揺が見えた気がした。いや、第一村人なので、少し私が疑心暗鬼になっているせいかも知れない。
「ヒナよ。あなたは?」
「私は…」
また、あの感覚だ。
思い出そうとする程反比例的に、名前が霞んでいく…
気持ち悪いので、追わないことにした。
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