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「雨の時は」「あった!」
ヒナが何かを見つけたようだ。
「はい、これ。やきとり」
缶詰だった。大きく書かれたひらがなの「やきとり」には、何か見覚えがあった。
「あ、これもいるよね」とヒナは箸を差し出した。
指を輪っかに通し、パキャと力の抜ける音がする。
「蓋はどこに捨てれば…」
「あ、ちょーだい」ヒナは受け取ると、カバンの中のレジ袋にしまった。
「いただきます」
見た目は、正直言っていまいちだった。
脂が固まっていて、その出で立ちは私の食欲を抑える。
ヒナはそれを見て笑うと、
「火に近づけたらいいよ、ほら」
と長めの金属製のトングを渡してくれた。
「なるほど」
トングで缶を挟み、火に近づける。
腕は疲れるが、やきとりが20倍くらい美味しそうに見えてきた。
端の方が少し泡立ってきたので、缶を離す。
「トングありがと」
「1000円ね」
「借金させてください…」
「うそだよ」
ヒナはまたカバンのなかを探っている。
「うん、とっても美味しい」
「それはよかった」
「他にはこの街には人がいるの?」範囲を絞る。「うーん…変な人ばっかだけど、いるよ。そだ、後で案内してあげよう」
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