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「美琴っ!?ねぇってば!!」
美琴の友達、松山さんの声が教室に響いた途端、僕は今まで考えていたしがらみ全て薙ぎ払うように駆け寄った。美琴は床に倒れ込んでいて、倒れた拍子になのかポニーテールが解けていた。
「何があった?」
「喋ってたら急に顔色悪くなってきて、そのまま気を失って…」
倒れる時はいつもこの症状だ。体内のカロリーが足りていない。…やっぱり食事の量を減らしてるな。
「僕が保健室連れていく。先生には上手く言っといて」
「ありがとう。助かる」
誰もいない保健室に辿り着いた僕は美琴をベッドに寝かせてカバンの中に入っていた注射を右腕に刺した。10分程で少しずつ顔色は元に戻ってきた。
無茶する美琴は危なっかしいけれど、その僕には真似出来ないパワーを食べることで賄っているんだ。
「あれ?私、教室にいたのに…」
意識が戻って起き上がろうとする彼女を僕は全力で止めた。
「倒れたんだよ。カロリー取らないから」
「…ごめん」
「食事減らしてるのはダイエット?好きな子のため?でも、分かってると思うけど美琴は…」
「そんなの分かってるもん!!」美琴は涙声で叫んだ。
「でも、こんな体質だけど太一に少しでも可愛いと思ってもらわなきゃダメだから…」
「えっ」
僕の言葉でうっかり口を滑らせたことに気づいた美琴は恥ずかしさと気まずさでプイとそっぽをむいた。
「もう振るなら振ってよ。その方が楽だから」
「どうしようかなぁ」
「こっちは真剣なんだって…!!」
怒って僕の方に向き直った美琴の唇に僕はキスをした。美琴の顔がみるみるうちに赤くなった。
「これでどう?」
「太一のキャラ的にこんなの絶対やらないじゃん」
「色々美琴に振り回されてきたからね。伝染っちゃったよ」
お互いに顔を見合わせてフフッと笑った。
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