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瑠璃子が無事手術を終えたのは、翌月だった。
あのあと、意外に入院の段取りは難航した。手術の予約が一杯で、何ヶ月も待たされそうだったが、一件キャンセルが出て、瑠璃子はすぐ手術を受けることが出来たのだ。
麻酔が覚めて、まだぼんやりしている瑠璃子のベッドの傍らで、夫が医師に深々と頭を下げているのを見た時に、ようやく手術が無事終わった実感があった。
「ママ」と言って、病室の扉から夏海が顔を出す。
夏海は先週から実家に帰って来ている。今日も手術の間ずっと待ってくれていた。
「なんかあっという間に手術終わっちゃったわね。でももうしばらく実家にいるから、なんでも言いつけて」
「いいのよ、全部パパにやってもらうから。なっちゃんはいてもすることないわよ」
「パパが?! へー、こんな気の利かない仕事人間のパパにできるの」
「おい、気の利かないは余計だろ」
勝彦は苦笑いしている。もしかしたら死んでいたかもしれない病気なのに、そのさなかに家族の団欒を病院で味わえるとは不思議なものだ、と瑠璃子は思う。
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