思い出売ります

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その時は、『ママの方が遊びに行かせてもらうわ』と、明るく言ったものの、いざ夏海のマンションを訪ねようと思うと、気ぶっせいな心持になる。

「それはそうだろう。娘といっても、もう違う家の主婦なんだから、あまり押しかけるのは良くないよ」勝彦に言われるが、今の時代、働く娘に代わって家事育児をするのはその母親の務めであり、いずれ孫が出来たら毎日でも通って手伝ってやりたいと思っているくらいなのだ。

　それなのに、今なぜ新婚夫婦のマンションを訪ねる気になれないのだろう。
　長年の人生の疲労が蓄積しているような気もするし、ようやく子どもが自分の手を離れ自由時間が増えたので、それをしばらく味わいたいという気もするし。
そんな折に、あのリサイクルショップを訪ねてみよう、と思い立ったのである。