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 その店を知ったのは約ひと月前。古いテレビドラマの再放送を見たことがきっかけだった。  自分が子供の頃、実家で使われていた食器やテーブルクロス、更には珠のれん、箪笥。どれも見覚えがあり、懐かしく、気がつくと瑠璃子はドラマにのめり込んでいた。  帰宅した勝彦に、熱心にその話をしたが、聞いているのかいないのか、適当にふんふん相槌をうつだけで、手応えのないこと甚だしい。  しかし、夫以外にそんな話が出来る存在がいない瑠璃子だった。学生時代の友人とは、転勤族生活を送るうち疎遠になり、故郷にはもう実親はいない。 実家には、瑠璃子と血の繋がらない継母が元気で暮らしているのだが、月一回くらい電話でご機嫌伺いする程度だった。  瑠璃子は子供の頃に実母を亡くし、父が再婚して新しい母を迎えた。継母は気のいい、優しい人であったが、あくまで父の奥さんであって自分の母親ではない、という気持ちが根底にあったし、お互いに遠慮もあったので、心の底から打ち解けることはないままだった。
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