第1章

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 生田さん、私を裏切ったこと、一生許さない。私は生田さんに不幸になってほしい。生田さんの才能は本物だけれど、それを知っているのはアンダーグラウンドできゃっきゃしているあの嘘つきや泣けるギターの歪みPだとか、そういう人たちだけであってほしい。  私は生田さんが承認欲求なんてまるでなく、アンダーグラウンドでただ自分が好きなものを淡々と描く、そういう孤高なところにひかれていた。生田さんに、承認欲求なんて持ってほしくなかった。褒められても、もごもごと照れて鬱屈していて欲しかった。生田さんをこそ、真の表現者だと、尊敬していた。ほんものの才能は埋もれてこそ美しいと、信じることを許してくれた、そういうのが生田さんだ。生田さん、だった。生田さんはもう死んだ。  そういう孤高さを失ってもなお、才能に溢れているところ、嫉妬する、羨ましくて、疎ましい、軽蔑する、稀有な孤高さを捨てたこと。  生田さんの孤高を、私は愛していた。  生田さん、私は怒っている。軽蔑している。生田さんを、私の中の生田さんを殺したこと。孤高な、薄暗く退廃した生田さんを殺したこと。     
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