第1章

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 承認欲求にまみれて、売れ線、流行りのビート、ポップなイラストをつけた動画があふれる中で、ノイジーで、あるいはペイントとマウスで描かれた自作のイラストで、でも味とセンスに溢れるサムネイル、ゆがんで聞き取りづらい歌詞、でもなんとなく「響く」感じ。かっこよかった。メジャーなランキング動画をしっかりチェックしながらも、ボーカロイドアンダーグラウンドタグを漁って、理解できるふりをしたかった。  女子高生だ。「こんなのを聞いちゃう自分」が好きだった。そういうお年頃だった。ただ、今聞いてもいい曲が多いと思うし、まあ今でも「サイケデリック・ロックを好きな自分」が好きなのかもしれない。そもそもサイケデリック・ロックにパワーがあるのかもしれない。良いか悪いかの判別なんてついたためしがない。これも人間が諦めるべきことのひとつだ。  さて、インターネット嘘つき詩人たる田中ナウ氏、泣けるファズ・ギター歪みP、彼らの投稿動画だけではなく、ツイッターをフォローしていると、理解できないようなノイズ・ミュージックがおすすめされてくる。古い外国の音楽が流れてくる。歌謡曲が流れてくる。よくわからないけどなぜかおすすめされているものを、とりあえず摂取する。好きな人が好きなものはたぶん好き。相対的美紀子氏なんか、今聞いても理屈はわからないのだが、なんとなく「落ち着く」感じは分かる。それが感覚として気持ちいい。頭じゃなく体で反応する感じ。アンダーグラウンドで息をして、ひととは違う自分に酔って、みんなが知らないすごい人が、すごいすごいと褒めるものを無作為に読んで見て聞く。     
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