第1章

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 生田さんは、そういうカタログの中のラインナップの一つだった。  生田さんを初めて知ったのはなんだったか、おそらく歪みPの動画のサムネイルじゃなかろうか。歪みPはノイズ・ギターが特徴的なPさんである。Pとはボーカロイドを使った音楽投稿者に対する敬称である。歪みPさんの動画は、普段はペイントか何かで描かれた自作のお化けのイラストなのだけれども、ある日投稿された動画は違った。 「ボカロ投稿していく中でひとつの目標だった、生田さんにサムネイルを描いてもらう夢がかないました!」  投稿文にはそう書いてあった。  私の生田さんとのファースト・コンタクトだ。  サムネイルは、確かに、今までと違った。モノクロで描かれたもの寂しげなイラストだった。公園に女の子が一人おり、お化けが夜空に浮かんでいく。曲の内容は、いつだってよくわからないけれども、友の自殺を止められずに嘆く人のリリックに聞こえた。  歪みPさんが「夢」とまで言うなんて。なんとなく、不満だった。こんなモノクロのイラスト、歪みPさんと大して変わらない……でも歪みPさんが良いと言うんだから良いんだろう。生田さんについては、無理やり腑に落ちさせた、そういうファースト・コンタクト。     
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