第1章

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 それから何度も生田さんを見かけた。歪みPは生田さんを大好きだったし、田中ナウ氏も生田さんのファンだった。  生田さんがあの頃ツイッターをやっていたかどうかは覚えていないが、おそらくやっていたとしてもかたくなにフォローしなかったに違いない。歪みPや田中ナウ氏がおすすめするピクシブやピアプロに投稿された生田さんのイラストや、漫画を読んで、私は生田さんをなんとなく良いのだろうな、と微妙な距離感で見ていた。  生田さんが描くのは、へちゃむくれの顔をして、言葉をまともに話せない人外の女の子と、みすぼらしい小太りでコミュニケーション不全でいわゆる負け組と呼ばれるような男の人の交流が多かった。もう人生に楽しみもなく、自殺を試みるも勇気もなく、人外の女の子を唯一のよりどころに生きていく。希望は宇宙や夢の中にあるかもしれないがそれは幻想だ。そういう漫画を描く人だった。そういうジャンルには一定の需要があって、ただそれは商業ラインに乗るレベルの需要ではない。インターネットの片隅で、アンダーグラウンドできゃっきゃして遊んでいるような、承認欲求のないマイナーな人たちにのみ受ける需要である。     
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