第1章

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第1章

 生田さんについて書かねばならぬので書く。  私は怒っている。生田さんがへちゃむくれじゃない女の子を描いたことに怒っている。生田さんがおまんじゅうみたいなつぶれた顔の女の子じゃなく、八頭身の女の子を描いたことに、商業の一般青年誌から漫画家としてデビューしたことに、しかも、大衆向けの、普通の、確かに生田さんの特色が残っているにせよ、才能がいかんなく発揮されているにせよ、そんなことは関係なく、生田さんがきちんと「成り立っている」漫画を描いたことに怒っている。  断っておく。生田さんと私はなんの接点もない。私はただのファンである。ファンでもない。生田さんのことは日本のどこかで不幸せに生きていてくれればいいな、と思っていたぐらいの、そんなぐらいの間柄である。  そう、不幸せに生きていてほしかったのだ。それが生田さんへの望みだった。勝手だろう。勝手だろう。知るか! 私の感情で、私の願望だ。読者とか、ウォッチャーとか、フォロワーとか、ファンとか、そういう、見られる人と見る人は常に不平等だ。  期待とか憧れとかは常に不均衡で、不条理で、どうしようもないものだ。     
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