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10月5日その2*
ぼんやりする意識の中、壁に手を添えて階段を降りる。月明かりに照らされた渡り廊下が見えてきて、ほっと息を吐いたけれど、その息は感じたことも無いぐらい熱が籠もっていた。
このまま自室へ戻るのは絶対に無理だ…休憩を挟むならば、あそこしかない…!
部屋の主の所在など考える余裕も無く、熱に浮かされる体を引きずりながら売店を目指した。
売店が廊下の一番端に位置していたことを、こんなに恨んだことは無い…
一歩一歩、売店へ近づくにつれて体が熱くなって堪らなくなる。早く、とにかく早く横になりたい…!必死の思いで売店の扉の前まで辿りつくと、緊張しながらもその扉へと触れた。
これで開かなかった場合はゲームオーバーだ…そう思いながら力を入れれば、扉は簡単に開いてくれた。
カランと言う音と共に部屋へと入ると、私の体は力無く床へと倒れ込む。
「はぁ…はぁ…」
体が熱くておかしくなりそう…おまけに断続的にくるゾクゾクとした悪寒のような震えが止まらない。
「助けてぇ…」
ぎゅっと目を閉じて体を抱きしめる。思い浮かべるのはリアムの姿。熱を逃がすように息を吐き出していると、背後からユノさん?と聞き覚えのある声がした。
「ッ、リアムさぁん…」
ぐったりしている体を無理矢理起こして振り返れば、バックヤードから顔を出しているリアムの姿があった。呆然とこちらを見つめていた彼は、私の返答を聞くとハッとしたように息を飲む。それからすぐに私の元へと駆けつけてくれた。
相変わらずの無音でこちらまできてくれた彼が、膝をつける。私と同じぐらいの位置まで落としてくれたリアムの腹へ、余裕もなく思い切り抱きついた。
「え…、」
戸惑うリアムの声を耳に聞きながらも、行動を止めることなんて出来ない。
布地を強く握りしめ、頬を擦りつけるように腹へ寄せる…布と擦れているだけだというのに、好きな人の服だと思うだけで痺れるような快感が襲ってくる。
「ふ…っ、ぁ…」
何度も腹へ頬を擦りつける私の様子で、リアムは早々と察したらしい。
口で呼吸しないといけないぐらい空気が足りていないし、リアムを見上げる私の視線は焦点が合っていないんだろう…そんな明らかに発情している私の様子に引くこともなく、失礼しますよと声を掛けた彼は、軽々と私を横抱きにした。
「リアムさん…」
体を震わせながら口にした名前は、酷く甘ったるい。けれど、私の呼びかけに反応することも無くリアムは歩き出す。そのまま無言でバックヤードへと続く扉の前へ立つと、足で乱暴に蹴り開けた。
扉とは違い、壊れ物でも扱うように座り慣れたソファーへ私を降ろした彼は、無言のままバックヤードを出て行ってしまった。
どうしよう、怒ってる…?彼を見た瞬間、動くのを止められなくって、本能のままに求めちゃったし…いつもの優しい笑顔なんてどっかいっちゃった、無表情を目の当たりにすればさすがに不安になる。
嫌われちゃったらどうしよう…深く考えられない頭のせいで、悪い方向ばかりに思考が流れていく…体もつらいし…なんで私がこんな目に…!こんなことで泣きたくなんかない…しかもリアムの前だなんて…!
元から滲んでいた視界は、頑張り虚しく簡単に涙が零れて落ちていく。
「っ、うぅ…んぅ!」
それでもみっともなく泣き声を上げたくは無いからと、ぎゅっと唇を噛みしめて堪える。それすら快感として拾ってしまう今の体がまた悔しくて…意地になって声を飲み込んでいると、いつの間にかリアムが私の元へと戻ってきていた。
「ユノさん?!どうしました?どこか痛みが…?!」
「う゛ぅ…ッ、ごめ、なさい…」
次から次へとあふれ出す邪魔な涙のせいで、綺麗なリアムの顔が歪んで見えてしまう。そんな私を見て、彼はソファーの横へ膝をつくと珍しくおろおろしていた。
当然だろう。息も絶え絶えに夜更けにやってきた女が、目を離した隙に泣き出しているんだもん、驚きもするよね…。
「はし、たなくって…ごめ…ッ」
必死になって言葉を紡ぐ私に、何故だか彼まで苦しそうに眉を寄せる。
なんでそんな顔をするのか分からなくて見上げていると、腕が伸びてきて、そっと私の頬へと触れた。触れられた瞬間にビリっと電気が走って、思わずキツく目を瞑る。
「君が謝ることなんて、何も無いでしょう?」
「ふ…ッ」
親指の腹で頬を撫でながら語りかけてくる声が、とても甘く聞こえる。瞑った目に力を込めて、必死に快感を堪えるんだけど…それを許さないように名前を呼ばれてしまう。彼に名前を呼ばれて、無視出来るはずがない。
ゆっくりと瞼を開けば、真横から覗き込んでいた深い緑は、思ったよりも近くでこちらを見つめていた。
「なぜ媚薬の効果が出ているかは分かりませんが、そんな状態の君が、私の所へ来てくれたという事を…嬉しく思ってしまっている」
優しく唇で額へ触れられ、それだけで体が反応してしまう。ゾクっとする背筋に耐えている私に構うこと無く、リアムは言葉を続けた。
「もう…我慢、しないで良いですからね」
そう言った彼は、すっかり夜の顔へと変わっていた。
◆
「んぁあ…!だ、めぇ…!!」
強すぎる刺激で、目の前がチカチカしているような気がする。
指先で摘まんだ乳首をぐりぐりと強めに苛められて、体が揺れてしまう。無駄に大きな胸は、リアムの手によって無造作に形を変えられていく。
彼の、興奮しているような息づかいに更に煽られ…体は信じられない程に火照っていた。
「ユノさん…もしかして、強めの方が好きですか?」
胸の膨らみへ何個目かの赤い痕を散らしたリアムは、優しく目を細ませながらとんでもないことを聞いていた。
いつも与えられる刺激に翻弄されているばかりで、何が気持ちいいかなんて考えたこと無かった…!と言うか、リアムが触ってくれるだけでなんでも好きなんだけど…そんな心内を伝えられる程、今の私に余裕は無い。
「わか…んな…!」
過呼吸気味に息を吸い込んで、首を振るだけで精一杯。そんな私の反応を予想していたリアムは、そうですか?と笑みを深めると先端をパクリと咥え込んだ。
「ぁん…!」
周りを優しく舌でなぞってから、ちょんと先端を突かれる。それから間髪入れずに小刻みに舌先が動きだして、痺れるような刺激が生まれた。
「ひぁあ?!」
同じように反対側を指で擦られ、大きく腰が揺れ背がしなる。胸だけでここまで感じることなんて無かったのに…!止まること無い激しい愛撫のせいで、体の震えが止まらず…媚びるように腰が上がり、リアムへと擦りつけてしまう。
そうすれば、硬くなっている彼の物が当たり、ますます興奮する始末。
「あ、ダメ…!だめ、ですぅ…!!」
同じように興奮してきたのか、リアムの擦り上げる強さが増していく。加えて、甘噛み程度で歯を立てられて、ビクビクと腰が揺れる。
何で胸だけでこんな事になっちゃったの…?!頭を掠めた戸惑いも、媚薬のせいで敏感すぎる体では考えることなど出来やしない。
「イっ、ちゃうよぉ…!」
思わず漏れた声に、速度が上がった気がする。そんなのを確かめる余裕も無く、追い詰められていた体は一際大きく震えた。
「~~~ッ、ぁああ…!」
小刻みに痙攣する体から、一気に力が抜けていく。ぐったりとソファーへ体を預けたところで、やっと乳首を攻める動きをリアムが止めてくれた。
嘘…胸だけでイッちゃうなんて…大きく息を吸いながら呆然としていると、触れるだけのキスが降ってくる。それから優しく髪を梳くように頭を撫でられた。
「すごく可愛い…」
好きな人に褒めてもらえることが嬉しい…自然と緩んでしまう顔を取り繕うこともせずに、頭を撫でてもらう。そんな甘い時間のはずだった…
「あん…!」
イってすこしは落ち着いたはずの体は、すぐに熱を取り戻し、撫でられるだけでも快感を拾い始める。普段はこんなことで感じたりはしないのに…!
わけも分からず感じてしまう体に驚き、どうすれば良いのかも分からない。混乱しながらリアムへと視線を向ければ、彼はにこりと笑顔を返してくれた。
「残念ながら、効果は抜けないようですね」
「ん…ッ、リアム、さん…」
頬を指で撫でられ、縋るようにそれを追いかける。小動物でも相手をしているように彼は頬を撫でてくれるけど…もう片方の手は、太ももからなぞるようにして上へと撫で上げていく。
「あ…っ、ああ…!」
迷い無くスカートの中へと入り込んだ手が、中心部分へと進む。びしょびしょで使い物にならない下着へ指を掛けられ、ゆっくりと降ろされる…その刺激がもどかしくて堪らない。
「んんぅ…!」
「もう一回ぐらい、達しておきましょうか」
微笑みながら軽く鼻先へキスをしたリアムの言葉を理解する間もなく、彼の体が私の上から去って行く。途端に離れていく距離が寂しくて、咄嗟に手を伸ばした。
「やだ…!」
「大丈夫」
片膝をソファーの下へと降ろした彼は、私の手を握りながらも体を下の方へと移動させて行った。
無意識に目で追えば、リアムの顔は私の足の間へと寄っていく。そこは、いつの間にやら脱がされた下着と、捲り上げられたスカートのせいで、すっかり隠す物がなくなってしまっていた。
媚薬で理性が麻痺しかけていても、少しばかりの羞恥心は存在していた。恥ずかしさに短い悲鳴を上げながら、隠そうと足を閉じようとしたけれど、間に入り込んできているリアムのせいでそれは許されない。
逆に、やんわりと足を広げられると一層そこを露出させ差し出すような形になってしまった。
「ぁ、まって…!」
静止虚しく、リアムの顔が露わになっている部分へと寄せられる。自分でもまじまじ見たことも無い秘部を、信じられない程の間近でリアムに見られるだなんて…!
恥ずかしくて死んでしまいそうなのに…!視線を感じると言うだけで、じわっと何かが溢れ出たのが分かる。
「おや…腫れてますね」
「やだぁ…!」
「なんで?ここは見られて喜んでますよ?」
ちゅっと軽く唇を寄せられ、腰が跳ねる。信じられない程の快感…これから起こることを想像するだけで、興奮が抑えきれない…
「今、触ってあげますからね」
私の意思とは関係無く、勝手に動くそこは今か今かとリアムを待ちかねている。ひどく甘い声が聞こえたと思えば、温かい物に包まれた。
「んぁあ…!!」
遠慮なく入ってくる舌先は、ヒダを掻き分け、すっかり腫れている粒の部分を舐めあげる。先で何度も押すように刺激され、暴力的とも言える刺激が体全身を駆け巡った。
「ひぅう?!」
ぢゅっと卑猥な音をたてながら吸い上げられ、顔を大きく動かされる。かと思えば、中へ熱い物が入り込んできて、丹念に舐めあげられる。そんな、どうしよう、リアムに舐められてるなんて…!
「だめ、ですぅ…!」
こんなとこ汚いのに、やめて欲しいのに、信じられないほど興奮してる…初めて与えられる感覚は凄まじく、付いていけそうにない。必死になって首を動かして耐えるんだけど、全てが気持ち良すぎて蕩けてしまいそうだ…。
「あぁッ、んッ、あぁあ!」
声なんて抑えられない。小刻みに動く舌先に合わせて腰が大袈裟なまでに震える。怖くなるような刺激だけど、それがもっと欲しい…求めるように彼の顔へと揺れる腰を押しつける。ぎゅっと握っている手を強く握りしめれば、分かっていると言わんばかりに握り返された。
「やっ、なに…?!」
こりこりと舌先は粒をいじめていたはずなのに、突然中を擦られる刺激に驚く。快感を追うように閉じていた目を薄く開くと、ちょうど顔を上げたリアムと目が合った。
うっとりと目を細めた彼は、見せ付けるように自身の唇を舐め上げる。それだけで、無意識に腰が反応してしまう。
「もっと欲しいですか?」
「ふぁあ!?」
中へと入り込んだ指の腹で、軽く叩くように押される。的確に与えられる刺激に答えるよう腰が跳ねるのを見て、リアムは満足そうに微笑むと再び顔を秘部へと近づける。
入り込んだ指が擦るようにされ、電気が走る中、更に粒へと息を吹きかけられた。えっ、うそ、やだ、ちょっと待って…!?
「あっ、やだ、あぁ、一緒には、ダメぇえッ!!」
遠慮なく粒を舌で扱かれつつ、指が中を擦りあげる。信じられない刺激に、悲鳴にも似た声が出てしまった。快感が強すぎておかしくなりそうだってのに、リアムは更に指を追加して激しさが増す。
「あ、イく…!イっ、ちゃうぅう…!」
私の声に、無言のままリアムが愛撫で追い打ちを掛けてくる。はしたない水音をたてながら、中を2本の指で擦られ、熱いぐらいの舌で粒を扱かれる。途端に増えた刺激に、体は耐えられず…数回程度の動きで再び大きく痙攣を起こした。
「イッ、あああぁぁ!!」
何度も小刻みに震えながら抜けていく体の力…気持ち良すぎて、閉まることを忘れた口は、はくはくと動きながら必死に酸素を取り込む。
愛液と唾液でどろどろになったそこから顔を上げたリアムも、さすがに息を上げながら自身の口を拭っていた。雑に口を拭いながら肩で息をして…ギラついた深い緑の瞳を細めながら見下ろしてくる…そんな姿に、再びお腹の奥が熱くなるのを感じる。
絶頂を2回も迎えたって言うのに、体は再び熱を取り戻そうとしている…信じられない精力…一体どうしたらこの熱は収まってくれるのか…
「は…ッ、くるしいよぉ…」
最初から泣きっぱなしの瞳から、またもや涙が溢れ出る。助けを求めるようにリアムを見つめれば、彼はギラついた目のまま、困ったように目尻を下げた。
「コラ、煽らない」
「ごめ、なさ…」
苦笑を浮かべたまま、彼は手を伸ばす。いつの間にかテーブルの上に置いてあった小瓶の蓋を開けると、一気に呷った。ぼんやりと眺めていた私の方へと視線を戻したリアムは、ゆっくりと顔を近づけてくる。
反射的に目を閉じてキスを待つと、すぐに柔らかな唇が触れてきて…そこからゆっくりと口内へ液体が流れ込んできた。与えられるままにそれを飲み込み、飲みきったのを確認してから解放される。
「なに…?」
「中和剤です。これで、落ち着くはずですよ」
ご褒美のように優しいキスを落としたリアムの言葉を聞いたのが最後。
それからすぐに、意識が混濁し始めて目を開けていられなくなってきた。虚ろになっていく意識の中、耐えがたい睡魔に襲われ…世界は暗転した。
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