12月26日その4*

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12月26日その4*

   あれほど気持ちいいと思ったベッドの感覚が、今は何も感じられない。毛布の間へと素足を潜り込ませ、盗み見るようにリアムへと視線を送った。  当然のごとくそこにはリアムが居る。さっきまで私が座っていた椅子へ上着を掛け、シャツの首元を緩めている横顔が飛び込んできて、慌てて視線を逸らした。  し、心臓に悪い…!ぎゅっと自分の服を掴み、下を向く。そうすれば目に飛び込んでくるのはベッド…これから彼の部屋で、一晩過ごすんだって意識してしまって…  本番までは無かったけど、何度かそういう行為だってしてきたのに…とっても恥ずかしいのは何でだろう…?!なんだか混乱し始めている…!  両手で顔を覆っていたら、すぐ隣で、ギシって音と共にベッドが沈む感覚がした。 「どうしました?」  少し笑いを含んだ呼びかけに、指先だけ開いてリアムの方へ顔を向けてみた。  私の隣へと上がり込んできたリアムは、自分の膝の上に肘を乗せて頬杖をついてた…緩められる目に、3つぐらいボタンを開けはだけている胸元…ダメ、思考が停止する。  ど、どうしよう…かっこいい…好きです… 「緊張してるの?」 「…!」  顔にかかっていた髪を、指で遊ばれた。ゆっくり耳に掛けられ、耳たぶを触られる。その僅かな刺激ですら、体が過敏に反応する。名前を呼ばれ、距離を詰められ、すぐ近くに彼の熱を感じた。  ちゅ、ちゅっと軽くこめかみから頬に掛けてキスが降ってきた。顔を覆っている指にまで施されるそれは、顔を見せてとねだられているみたいだ…この甘えてくるような仕草をされたら、言うことを聞くしか無くなる。  前提として、私はリアムのことが大好きだから、求められれば嬉しいに決まってる…! 「ず、るい、です…!」  堪らずに手を離して、顔を隠すようにリアムの胸へと抱きついた。鎖骨当たりへぐりぐりと額を押しつけると、優しく抱きしめ返してくれる。 「今のリアムさん、ただでさえ格好いいのに…ずるいですよぉ…」 「ユノさん…」 「もうダメかもってところで助けてくれて、リアムさんのこといっぱい知れて…格好いい服も着てくれて…こんな…死んじゃう…」  もう尻すぼみも良いところ…最後の方なんて、息だけ吐き出したような物だ。思考が停止したせいで、私の理性まで止まったみたい…普段から心の中で思ってることを、思い切り口に出してしまう。 「それは…困りました」  笑いを含んだ声でそう言うと、頬から顎のラインを撫で上げられた。すりすりと、何度も、優しく。  そのままゆっくり顎へと指が宛てられ、顔を上げさせられてしまう。決して強い力じゃないのに、どうしても彼の動きに逆らえない。恥ずかしいし絶対に顔は上げないって思ってたんだけどなぁ…見上げた先には、やっぱり甘く微笑んでいるリアムが居る。いつも見ている顔のはずなのに、やたらときゅんとしてしまう。 「私ね、君が死んでしまうのが怖いんです」 「え…?」 「人はいつか死ぬ物で、早いか遅いか、それだけだと思っていました。自分の生にすら無頓着だったのに…私は、君が死んでしまうことが怖い」 「し、死なないです…!」 「本当ですか…?」 「本当です!」 「良かった…それじゃあ、私に触れられても大丈夫ですね?」  ひ、卑怯だ…!そんなこと言われちゃうと、顔を隠せないよ…!  恥ずかしいのを必死に我慢してリアムを見上げていると、可愛いと笑われてしまった。この度々挟まれる、思わず漏れちゃったみたいな可愛いも火力が高くて本当に困る…  それでも、我慢して見上げ続ければ、両手で頬を包み込まれる。 「ん…」  静かに距離が縮まり、唇にもキスが降ってきた。何度か軽く触れ合うようなキスの途中、舌先で軽く唇をなぞられる。答えるように唇を薄くひらいたら、ゆっくりと舌が入り込んできた。  私のなんかより全然大きいそれに絡め取られ、ざらりとした舌触りに体が熱くなっていく。 「ふぁ…ッ、」  上顎、舌の裏と撫で上げられぞくぞくと背筋に電気が走った。リアムについて行くだけで必死すぎる…気持ちいいし、何よりも幸せすぎてどうにかなってしまいそう…。しがみつくように彼のシャツを握りしめ、何度も来る震えに耐える。  ようやく解放された頃には、息もあがってくたくたになってしまった。ぼーっとする頭の中、ゆっくり目を開けてみたら、自身の唇を舐めあげたリアムが飛び込んできた。  優しく体を押され、大きめな枕へと頭が沈む。私の体の上へと跨がってきたリアムは、再び触れるだけのキスをしてから熱の篭もった瞳で私を見つめた。 「もっと、感じさせて下さい…温かい、ユノさんを…」 「はい…」  私の返事を聞いたリアムが、嬉しそうに笑う。首筋から鎖骨へ掛けて、何回も丁寧に唇を寄せられた。鼻先が当たる度にくすぐったくて、息が漏れて…一際くすぐったいと感じた所を、温かいものが這ったと思えばきつく吸い上げられる。 「んッ」  ちりっとした軽い痛みに体が揺れる。そうすれば、箍が外れたかのように色んなところを吸い上げられて堪らなくなった。  頻りに動く体を大きな手が撫でていく。太ももを撫で上げ、お腹をなぞり…胸元まできた手にゆっくりと揉まれていく。 「ぁ…」  数回触られるだけで、先が硬くなっているのが自分でも分かる。直接触っているリアムになんて、もっと分かりやすいだろう…敏感に感じてしまう体が恥ずかしいのに、もっと触って欲しくて堪らない。  下着越しにある硬く尖ってしまった先端を、爪で何度も引っ掻かれ背が跳ね上がった。その瞬間に間へ腕が入り込み、軽々と留め具を外されてしまう。締め付ける物がなくなり解放された胸を、リアムの手が包み込み、揉みしだいていく。 「は…ッ、ユノさん…」 「ひゃ、い…!」  鎖骨当たりを吸い上げていたリアムに声を掛けられ、閉じてしまっていた目を開く。  すると、施されていた愛撫が止まって、リアムもこちらを見下ろしてきた。どうしたんだろう…少しだけ歪んで見える彼が、切なげに目を細めた。 「腕、あげれる?」 「?」  言われた通り、あまり力の入らない腕を上げて万歳のポーズを取れば、生地が体を滑った。火照り始めた体に冷たい空気が触れ、ワンピースが脱がされたのだと気付く。ついでとばかりに肩に掛かっていた紐を外されて、下着も奪い取られてしまった。  あまりの早業…呆然とリアムを見つめていれば、今度は自分のシャツへと手を伸ばす。手早く残りのボタンを外した彼は、勢い良くシャツを脱ぐと、放り投げた。 「ぴゃ…!」 「ユ、ユノさん…?」  興奮のせいかな…息を少しだけ荒くしてこっちを見下ろしてくるリアムに、反射的に見てはいけないと顔を覆う。思わず、無理ですぅと情けない声が出てしまった。嫌でしたか?と気遣う声に、慌てて首を振る。違うの、そうじゃない…! 「かっこ、よすぎ…」 「え…」 「ほんと…好きぃ…」  何でも無いです、少し緊張してるだけなので…  言ってることと思ってることが逆なんて、今の私に気づけるはずもない。  勝手にお腹の奥がきゅんとする。見ただけなのに感じちゃうなんてどうかしてるよ…だけど、それぐらいリアムが好きすぎて仕方ない。悶えている私の上で、呆然としていたリアムが小さく息を漏らしたのが聞こえた。  いくらなんでも今この時に言うのはムードが無かった…よね…?! 「ご、ごめッ、」 「んだよ、それ…」  慌てて顔から手を退かし謝ろうとしたけど、相手の姿に釘付けになってしまった。  斜めに大きく入っている腹部の古い傷跡、胸に残っている消えていない火傷の痕、腕にもたくさんの傷跡がある…そんな筋肉質な体を上へと上っていけば、手の甲を口元に宛てて、クツクツと笑っている顔があった。なんだこれ…私はこの人に萌え殺されてしまう… 「良かった、私の体に幻滅されたのかと焦りました」 「そんな…!良い体です…!」 「君も、思ってることが言えるようになってきましたね」 「あ?!え、っと…」  ダメだ、今日の私はおかしい…!ぼろぼろ出てしまう本音に口を隠したけど、もう遅いか…諦めて再び口を出したら、おや?とリアムが表情を変えた。 「どんな過去があって、傷跡の多い体でも…私は引きませんよ。忘れちゃいました?私は、貴方のことが大好きですから」 「ユノ、さん…」  誘うように両手を広げれば、少しだけ瞳を潤ませたリアムが抱きしめてくれた。洞窟で一夜を明かした時と同じように、触れ合った肌が温かい。 「アンタには敵わない…」 「えへへ…恐れ入ります」 「好きだよ、ユノ」  耳元で一際甘い声で囁かれた一言に、体が反応してしまう。それを切っ掛けとするように、今まで止まっていた愛撫が再開されていく。 「あッ?!あぅう!」  軽く耳たぶへ歯を立てた後、間髪入れずに乳首をきゅっと摘ままれる。突然の刺激に、声を押さえることなんて出来なくって、大きな声になってしまう。  さっきよりも激しく揉みしだかれ、太ももを撫で上げられていく。ゆっくりと足の付け根まで達した掌は、更に奥まで進み…そっと下着越し触れてきた。 「ひゃぅ…!」 「おや…」  耳から首元へと唇を移動させたリアムが笑う。直接触ってもいないそこは、もう信じられない程に濡れている…下着を触った彼に気付かれてしまった…  恥ずかしさに足を閉じようと動かせば、間に入り込んでいる手を挟み込み、もっととせがんでいるようになってしまう。 「ぁ、や、まっ、きゃぅ?!」  今まで全く弄られていなかった方の胸の先端を、熱い物で包まれて再び声が漏れる。同時に片方の先端を指先で摘ままれ、揉まれていく。  いつの間に移動していたのか…首元に居たはずのリアムの頭は胸にまで降りてきていて、しゃぶり付いていた。 「あッ、んぁあ…!」  柔らかく吸い上げられ、小刻みに舌先が揺れる。かと思えばきつく吸われる刺激は強すぎて、勝手に背中が浮いて弓なりになってしまう。突き出す形になる胸を逃がしてくれるはずもなく、更に攻め立てられていく。  そうすれば挟んでいた足も緩み始め、秘部を触っていた手も愛撫を再開させてきた。クロッチ部分をずらして入り込んできた指が、ひくつく入り口を撫で上げる。  くるくると周りをなぞって、ノックをしてくるのに、決して中へは入れてくれない…お預けをされているような感覚がむず痒くて仕方ない。 「あん…ッ、そ、れ…やだぁ…!」  ちゅっと臍にキスをしながら、胸を弄っていた方の手まで太ももを撫でてきた。いつまで経っても与えてもらえない刺激に、首を振ってしまう。  びくつく腰に回ってきた両手は下着へと掛けられ、脱がされていく。露わになったそこへリアムは再び手を伸ばすと、ゆっくりと指が一本入り込んできた。 「ふぁ…!」  待ち望んでいた刺激に、みっともなく腰が揺れる。少しだけ曲げた指先で叩くような動きが始まれば、体中にビリビリとした刺激が走った。 「んあぁ、ああ、あッ!」  気持ちが良すぎて、指の動きに合わせて上がる声が押さえられない…もう一本指が追加されると、一緒に押されバラバラに掻き回され…そのせいで、水音がしてくる。  だらしなく力が抜けた足の片方を持ち上げられる感覚に、少しだけ起き上がり足下を見てみれば、間へとリアムが入ってきた。  私と目が合った彼は、ギラついた瞳を薄く細めると秘部へ顔を近づける。 「や、だめ、~~~ッ!?」  静止も虚しく、熱く腫れ上がった粒まで顔を寄せた彼の息が掛かり、声にならない悲鳴が上がる。すぐに唇が寄せられ突くような刺激に、大きく腰が揺れた。  逃げようとした腰を、逃がさないと言わんばかりに掴まえられ、いやらしい音と共に吸い上げられてしまう。 「やぁあ、あうッ、だ、めぇえ!」  中の擦り上げる動きも大きくなり、つま先に力が入る。押し寄せる快感に突き動かされるように体が震える。もうだめ、頭がおかしくなっちゃいそうだ…! 「だめ、だ、ってばぁ…!」  口ではそう言ってるのに、体はもっと刺激を求めるように足を開いて腰を浮かせてしまう。一際大きく掻き混ぜ、強く吸い上げられて、何かが弾けたような気がした。 「ッ、、ぁああああ!!」  高く腰が上がり、体が痙攣を起こす。ビクビクと数回ほど揺れれば、力が抜け全身脱力してしまう。 「可愛い…」  足下で呟くリアムに反応出来ない…荒い呼吸を繰り返しぼんやりと余韻に浸っていたら、頭上に陰が落ちた。  ゆるゆると顔を動かすと、足下に居たはずのリアムが覆い被さっていた。 「リアム、さん…?」 「すみません…大丈夫、ですか?」  ギラついた瞳で、困ったように笑う…ちぐはぐな姿。怖がらせないように、我慢してくれているのだと思うと堪らなくなる。  だるい腕を動かして、近くなったリアムの首へと回す。 「全然、だめです…」 「ッ、すみません…」 「私だけなんて、だめです」  泳いでいた視線は、勢いよくこちらへと戻ってくる。面白いぐらいに期待と不安で揺れる深い緑を見つめながら、彼だけに聞こえる声で囁いた。 「…もっとして下さい…」
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