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12月26日その5*
きゅっと、眉間に皺が寄る。苦しそうな表情のまま、リアムは口の端を上げた。
「悪い生徒だな、ユノさんは…」
「だって、リアムさんのこと好きだもん…」
「煽んな…」
「嫌です…!」
辛そうにしている彼と話していれば、ふわふわしていた思考が戻ってきた。
流されるように始まった行為だったけど…与えられるのは私だけで、リアムは何もせずに終わってしまう。いつだってそうだった。そんなのは嫌だ…好きな人には我慢して貰いたくないんだ。
ここは譲らないと強い意思を込めて見つめ返すと、リアムは諦めたように息を吐いた。取り繕うような表情は消え去り、真顔で私を見つめている。
「私と君は、職員と生徒です」
「…はい」
ここでそんなことを言われるとは思わなかった…確かに関係はそうだけど、ここは学園じゃなくてリアムの部屋なのに…。
今更そんなことを言うなんて、少しだけ悲しくなる。しょんぼりとした私に、だからと少し強めにリアムが続ける。
「本番までは、しない」
「え…」
「しないけど…多分嫌だって言われても、もう止められない。無理だって思ったら、殴って下さいね…」
「そんな!」
声はそこで途切れてしまった。
荒々しく塞がれた唇に、舌がねじ込まれてくる。さっきみたいな優しいキスじゃなくて、食らい付くような激しさに驚く。
「ふッ…、ッッ!」
息継ぎなんてさせてくれない、全てを食べられそうな勢いに、勝手に体が震える。咄嗟に奥へと引っ込んだ舌へ絡みつき、引っ張り出され、強く吸い上げられる。
ビリっとお尻に掛けて電気が走ったような衝撃。しつこいまでに吸い上げ、甘噛みされ、意識が飛びそうになる。何これ、すごく気持ちいい…
飲み込みきれない涎が口の端を汚してくのに、そんなの気にならないぐらいキスに夢中になっていく。
「は…ッ、かわいい…」
解放する最後の時まで舌を吸い上げてから顔を離したリアムは、どろどろになってるであろう私の顔を見て微笑む。さっきの激しいキスと興奮のせいか、彼も私と同じように息が荒い…それなのに、私の頬を撫でる手はどこまでも優しいのがとても嬉しい。
「顔、蕩けてますよ…?」
指先で唇を撫で上げられ、小さな吐息が漏れた。触れてもらえるところ全てが気持ちいい…この前みたいに媚薬なんて使ってないのに…なんで…?
同時に切なくなる体のせいで、無意識に足を擦り合わせてしまう。
「ユノさん…後ろ、向けます?」
後ろ…?蕩けた意識の中、リアムの言葉通りに体を起き上がらせる。緩慢な動きだけど、彼は急かすことも無く優しく見守ってくれていた。
自然に体は膝と肘を突いて、後ろへ尻を突き出すような体勢をとっていた。それについて何もダメ出しされないってことは、リアムが求めているのはこのポーズで間違いないらしい。
ここまでくれば、彼がしたいことを察してしまう…ドキドキと心臓が煩い…さっきからえっちなことをしてるのに、なんで今更緊張なんかしてるんだろう…
体勢はそのまま、荒い呼吸を繰り返しながら振り返る。じっとこちらを見ているリアムの喉仏がこくりと動いたのが、とてもいやらしい。
「あ、の…」
「ちょ、っと待ってて下さい」
彼がベルトに手を掛けたのを目の当たりにして、思わず前へと向き直る。金属同士がぶつかる音の後に、すぐに衣擦れの音がして…優しく腰を掴まれた。何回か撫でた後に、別の感触がお尻の上の方でした。熱くて硬い物があたる。
「ぁ…」
「足、閉じてて」
それが何なのか分かってしまうせいで、ピクっと体が揺らしてしまった。
後ろから抱き込むように背中が覆われ、掠れた声が耳元でする。頷いて返事をすれば、上の方からお尻をなぞるようにゆっくりと熱くて硬い物が動いていく…こ、これ、リアムの、だよね…?
想像以上の熱さに、ドキドキが止まらない…ぎゅっと唇を噛みしめていると、ぴっちりと閉じた太ももへとそれが当たった。
「ん…っ!」
何度もお尻から足の付け根までのラインを往復されて、堪らず鼻に掛かるような甘ったるい声が漏れる。時たま漏れるリアムの吐息も耳に当たって…ああ、だめ…なんか、普通にするより、えっちな気がする…!
あからさまに興奮してしまう私に気付いているのか…リアムが項へ舌を這わせてきた。
「ふぁ…ッ、やぁ…!」
とうとう腕の力が抜けてしまい、頭の位置が下がる。我慢してたはずの口は簡単に開いていた。ちゅっと音をたてながら肩甲骨の辺りへされるキスがくすぐったい…。
閉じている太ももへ、熱くて硬い物が侵入してくる…。一度イってるせいか、掻き分け入ってきたそれは、つるりと簡単に根元まで入り込んでしまった。
この時ばかりは胸が大きくて良かった…重力に習って下に下がっているお陰で、入り込んできた物の先っちょを見ずに済んだ…。見たいか見たくないかで言えば見たい。リアムの逸物がどんなものか気になるんだけど…さすがにこの状況で目にしたら、はしたない言葉を口走ってしまいそうなので…
「ユノさん…」
「あんっ」
ぐるぐる考えていたせいで不意を突かれた。耳元で囁かれ、高い声を上げてしまう。動きますよ、と宣言してからゆっくりと腰が動き出した。
指よりも全然太く、凹凸のある物で秘部全体を擦り上げられて、ビクビクと腰が揺れる。ギリギリまで引き抜いたそれを、ゆっくりと元の位置まで戻され…もっと一緒になりたいと擦りつけられる。
「あっ、ひゃ、ぁあッ」
捲り上がり粒が擦られて、とてつもなくきもちい…!好きに動けなくて辛いはずなのに、私の様子を伺いながら動いてくれているリアムのお陰で、快感しか感じない。
次第に動きが早く、激しくなっていき、肌同士が当たる音が聞こえ始めた。背後から聞こえる荒い息づかいと、迫り来る刺激で徐々に何も考えられなくなっていく。
「ぁ、んぁあッ、だ、め、ああ…!」
ひくつく場所を掠めて擦りつけられるのが気持ちいい…滑りが良いせいか、何度も入り口を捲りあげては通り過ぎていく動きに、お腹の奥がきゅんとする。
体は処女でも、前世で経験した記憶のせいかな…入ってきて欲しいだなんて思ってしまう。
「だめぇ…ッ、ひぅっ、ら、めなの、にぃ…!」
本番、なしって約束したのに、欲しがっちゃだめだって分かってるのに…!
突き動かされて、気持ち良くって…、やだよ、なんで私こんな淫乱なの…!
「ダメ、ですか?」
「ら、めで、すぅ…!」
「でも…もっとと言ったのは、君ですよ?」
いきなり視界が変わる。枕しか見えなかったはずなのに、目の前に壁が広がっていた。四つん這いだった私の胸元へ、リアムが腕を入れて軽々と抱き起こし、膝立ちへと体勢を変えられている。
体重を彼に預け、後ろから抱きかかえるようにされ、リアムが首元へと顔を埋めてきた。荒い息が掛かって、更にそれで煽られてしまう。
「き、だ…ユノ…好きだよ…」
「ひゃうぅ?!」
擦りつけるより突き上げる動きに変わり、まるで本当にしているみたいな錯覚に陥る。
当たる角度も変わり、激しくなる刺激のせいで情けない声が上がる。なにこれ…もう、訳わかんないよ…!気持ち良くて、死んじゃいそう…!
縋るように抱きしめられている腕を掴むと、突き上げる動きが激しくなる。
「あんッ、もう、イっちゃ…!」
「もう、ちょっと…」
ガクガク腰が震えているのは、リアムのせいだけじゃない…必死になって限界を伝えると、勢いよく腰を打ち付けられる。だめ、ほんとに、もう無理だ…!
「ぁ、ふッ、ああああッ!」
「く…ッ!」
痙攣で体が仰け反ると同時に、太ももの間から熱い物が飛び散って、溢れ出る。今まで一番震える体を、ぎゅっときつく抱きしめられた。
やっと震えが治まったと思っても、何も考えられない…ゆっくりとリアムが太ももから引き抜く所まで、本当にしちゃったみたい…体に力が入らなくて、その場へ座り込む。それでも体勢を保っていられずに、くたっとリアムへと倒れ込んだ。顔を寄せる胸板がしっとりしている。
「ユ、ユノさん?!」
「ん…」
ふわっと香ったのは、初めて嗅いだ香り。
今までほとんど匂いがしなかったけど、これがリアムの匂いなのかな…落ち着く香りと温かさに包まれて、すとんと意識は落ちていった。
◆
「本当に、すみませんでした…!」
翌朝、目が覚めた私が最初に目にしたのは、直角90度で腰を曲げ頭を下げているリアムだった。突然の出来事に呆然と見つめてしまうが…私が何も発しない限り、彼も全く動く気配がない。
「ぁ、ぇ…」
頭を上げて下さい、そう言いたかった言葉は音にはならなかった。喉がつっかえるような感覚に首を傾げたら、勢いよく頭を上げたリアムが水の入ったコップを差し出してくれた。口パクで礼を伝えながらそれを口へ含む。冷たい水が通り抜ける感覚が気持ち良い。
「すみません…やり過ぎました…」
落ち込んだリアムの発言に、フラッシュバックするのは昨日の夜の出来事。本番まではいかなかったけど…もう同等なことをしてしまったような気がする…。
きちんと寝る前に着ていたワンピースを着ているし、色気と雄みがすごかったリアムも普段通りの顔をしていて…この謝罪が無ければ欲求不満な夢でも見たのかと思うぐらいだ。
「あ、の…大丈夫ですから」
「ですが…その、昨夜は、抑えきれなくて…」
「それは…私がねだったから…」
お互いの言い分に、お互いで照れてしまう。自爆も良いところだ…!一気に顔が熱くなるのを感じ、恥ずかしさで逃げ出したくなってくる…!
いそいそとベッドから降りると、リアムがさり気なくコップを受け取ってくれた。
「え、っと…!顔、洗って、着替えて、きます…!」
「は、はい…」
片言になりながら昨日も使ったバスルームへと歩き出す。意外と体が普通で、早足でドアまで向かいドアノブを握ったところで、別のドアが開かれた。
「あ~、すまない、リアム、戻ってきたところで申し訳な…」
長い黒髪を靡かせながら入ってきたのは、初めて見る男性だった。見た目は30代ほど…ドナートと同じぐらいだろうか。
近くに居た私と男性の目がばっちりと合う。部屋の中の空気が止まった気がする。
「あ、っれ?!あれ?!す、すまない!昨夜はお楽しみでしたのね?!」
「なっに、してんだよ、アンタ?!」
「え?!ほんと、え、リアム、おまえ、良い子いるなら言ってよ!」
「うるせぇよ!なんでアンタはいっつもノックしないんだ…!」
「ごめ、ごめんって、ところでそちらのお嬢さんは」
「ユノに話しかけんな!!」
ものすごい勢いで男性目掛けコップが飛んできて、それを草の蔓みたいなのが受け止める。危ないぞって注意をしているのを無視して、リアムが部屋から追い出そうと押し始めた。
「ユノさん!着替えてて、下さいね!」
「あ、はい…」
「ユノさんと言うのか?どれ、ちょっと挨拶を」
「やめろっつってんの!!」
すごい音をたてて入り口のドアが閉まる。何が起きているのか理解出来ずに固まっていた私の思考は、やっと動き出した。
「な、何、今の…思春期…?可愛すぎじゃん…?」
心の声が漏れてるけど…誰も居ないし、いいよね。
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