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プロローグ 昔話
昔々、小さな家におじいさんとおばあさんと小さな女の子が住んでいたそうだ。
おじいさんとおばあさんに育てられたその子はすくすくと、元気よく育っていき、
ある時、町一番の剣使いの男に剣術を教わるようになりました。
彼女は剣を握ることがとてもとても大好きで、どれだけ訓練がきつくとも、ひまわりのような美しいその笑顔をいつも絶やさなかったそうだ。
月日は流れ、十五になったその女の子は町一番の剣使いになるまでに力を付けました。
そして彼女は知ったのです。
世界には『魔王』と呼ばれる悪い人が人々を苦しめていることを。
彼女は決心しました。
「私がその魔王を倒す」、と。
そのために私が産まれ、剣を好きになって、力を付けたのだ、と。
しかしおじいさんとおばあさんは泣き始めて、今にも消えそうな声で「やめておくれ」と彼女の手を握り始めたのです。
その震えている手を握り返し、彼女はピクニックに行く前のように明るい笑顔で、
「私なら大丈夫、帰ってくるから。だから、帰ってきたときにたっくさん美味しいものを食べさせてねっ!」
握っている手を放し、代わりに剣を掴みました。
町に背を向けて、大きく手を振りました。
「いってきます」
そうして、彼女は『勇者』と呼ばれるようになり、一人で魔王を倒したのであった。
世界には再び、笑顔が戻ったのであった――めでたしめでたし。
〝おしまい〟
思ったことはないだろうか?
『これで本当におしまいでいいのだろうか?』、と。
魔王を倒した後、勇者はどうしたのだろう?
本当におじいさんとおばあさんの所に帰ったのだろうか?
そもそも、魔王を倒してよかったのだろうか?
物語の『終わり』というものは実は終わりがなく、その後の話はどれも触れていない。
他に共通して言えるのは、『全てハッピーエンドのように終わっている』ということ。
『めでたしめでたし』と決まり文句になっている話の最後。
『全部うまくいきましたよ~』と訴えてくるその言葉。
そう、バッドエンディングなんてないよ。
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