プロローグ 昔話

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 それもそうだ。  ハッピーエンドというのは物語で一番しっくりくるオチである。  バッドエンドなら、読者の心は不完全燃焼。話のオチとして最適ではない。  人生、全ての人間がハッピーでこの世からいなくなることは間違いなくない。  悔いを残して消える人が大半だ。  まあ物語であり、実話ではないので全ての人間がハッピーエンドというのもアリなのではないだろうか。  しかし、目を付けるところはそこではない。  みんな幸せになりました~。で、次は?  ――さあ、唐突に話の続きをしよう。  ズバリ言おう。  勇者は死んだ。  魔王と相打ちになり、おじいさんとおばあさんの約束を守れず、悔いを残して死んでいった……。  世界から見れば、魔王が倒したが死んでしまった勇者には〝世界を救った英雄〟と。  剣術を教えた男には〝英雄の師匠〟として、称えられた。  おじいさんとおばあさんには〝英雄の父・母〟として、同じように称えられたが、二人は悲しみに暮れていた。 「そんなのはいらん。あの子を返してほしい」、と。  おそらく、話を聞いてはくれないだろう。言う台詞は皆同じく、 「英雄もきっと喜んでいますよ」  酷い話だ。適当にも程がある。  しかしこれが現実であり、彼女が返ってくることはない。  おじいさん達にとっては、この物語の終わりは『死』だろう。  絶望し、これから幸せになる自身など全くなく、なら一層のことあの子のもとに行こう。  また三人で暮らそう…………  それを見ていた神は退屈そうに思った。  つまんない終わりだね。もっと楽しい話になるはずなのにな~。  終わってしまったものは仕方ない。じゃあ続きを始めよう!  顔も体も、いや存在すらしっかりと確認されていない世界の創造主(かみ)は、止まっていた手を動かし始めた―――― 『ハッピーエンドのようでバッドエンドだった物語の〝終わりの続き(ばんがいへん)〟の始まり始まり~っ!』
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