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そうして時間が経ち、俺たち一行はビルのような大きい建物に連れられた。
予想はしていたが、ここがギルドらしい。
……ただのビルに見えるんだけどなあ~おっかしいなあ~。
不安に押しつぶされそうになり、チラッと凛に視線を送ると、彼女も表情が引き攣っていた。よかった、戸惑うよな。
そう思っていると凛と目が合った。
その瞬間、お互いの思いが通じ合った気がした。
「それじゃあ! 行こおお!!」
拳を上げて叫ぶイルゼはとても楽しそうだった。
エンダというと、そんなイルゼを横目にガラスに向かって歩いた。
しかしそれはただのガラスではなく、自動ドアだった。
もうなんだ、異世界感がない、思うけどほんとに日本だなッ!!
愚痴だが、それをグッと抑え込み、エンダの背中を追った。
中に入ると、床一面磨かれた大理石が光を反射して俺たちをぼんやりと映し出していた。
正面には剣や杖を持った、冒険者だろう。たくさんの人が寛いでいた。
話をしている人たちもいれば、一人で下を向いてジッと何かを待っている人もいた。
日本ではコミケや学祭くらいしか見かけない派手に装飾された防具を着ている。
異世界だと再確認されて、グッと興奮を抑えた。
「三人とも、こっちです!」
エンダに声を掛けられ、止まっていた足を動かした。
雰囲気に圧倒されていて、エンダを追うことをやめてしまった。
まあ、仕方ないよな……。
言い訳を苦笑しながら思い、深く息を吐いた。
その時だ。
隣にいる凛が俺の手を握ってきた。
どうやら俺以外にも緊張している人はいたようだ。そりゃあ、恐いよな。
武器を装備している人たちは強面が多かった。
中には優しそうな女の人とか俺とあまり年が変わらないだろう青少年もいた。
ガヤガヤしているとはいえ、見知らぬところで見知らぬ人たちがいる場所に連れられてきたら、怖がるのも当然だ。
「ま、とりあえず行くか」
小刻みに震えている手を力強く握り返し、一歩踏み出した。
「……っん」
視界の端で凛が小さく頷いた。
離れてしまったエンダとの距離を一歩、また一歩と縮めた。
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