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エンダの正面には黒髪でミディアムヘアー、耳に髪をかけていて黒スーツを着ているよく見かける社会人の人だった。
「成功したんですね。おめでとうございます、イルゼさん」
俺と凛を見て、微笑みながらイルゼを称賛するお姉さん。
褒められたイルゼは口を緩めながら「それほどでも~♪」と照れていた。
「これで、イルゼさんも〝一人前の〟魔術師ですね!」
パチパチパチ――――
いまいち理解できず、小首をかしげた。
そんな俺に気づいたようで、エンダが振り向いて俺と凛、そしてイルゼに説明し始める。
「アキトたちが召喚された後にも言いましたが、魔法使いは〝召喚獣〟と呼ばれる自分の使いになる人物や動物の召還を義務付けされているのです」
「ああ、俺と凛がいれぎゅ……?」
「イレギュライファー」
「じゃねえから、試験がどうのこうの言ってたアレか」
っていうか、よく覚えてるな。お兄ちゃん、君よりしっかり話聞いてたつもりだったんだけどな~。
自分の記憶力と妹の記憶力を比べて頭を抱えてしまう。
義務付けられている召喚をしていなかったから、一人前――いや、正式の魔術師じゃなかった。
けど、その義務を果たしたから正式の魔術師に認められた、ってところか?
まあ、そんなところだろう。
自己解釈だが、合っているかどうか聞こうと口を開けたが、お姉さんに先を越されてしまった。
「エンダさん……もしかして、今のイルゼさんの状況を説明しました?」
お姉さんの表情が急に固まり、真に迫る低い声でエンダに問うた。
エンダも表情、そして体も一度大きく身震いして、固まった。
そして、ゆっくり……ゆっくり、お姉さんの方を向き始め、
コクッ、と小さく頷いた。
それを見たお姉さんは「はあぁ~」と大きくため息をついた。
「いいですか? 召喚獣は異世界に急に、何も合図はなく唐突に召喚されることは存じてますよね? 当たり前ですけど、戸惑いますし、精神状態が安定してないです。中には召喚されてすぐにストレスで死んでしまった召喚獣もいたと多くはないですが、報告されています」
「……はい」
「分かっているようですけど、マイナーな話をすると死ななかった召喚獣でも、死にはしないですけど何かしら精神に異常をきたすようです。正常のようですけど、一応検査はしときますね」
「…………はい、ごめんなさい」
反省したエンダは頭を垂れて、謝った。
謝られても……ねえ。
また凛と目が合い、頷いた。二人とも同じ想い、か。
「いやまあ、戸惑ったけど、死ななかったわけだし、こうして生きてるし。いつも通りだし」
「だから、そこまで思い詰めなくていいよ?」
凛はエンダの足元でしゃがみ込みこんで、笑顔で言った。
今彼女がどんな表情しているのか、俺には見えないがゆっくり顔を上げ、頬が赤くなりながら「ありがとうございます」と柔らかい表情で言ったことに満足した。
しゃがんだまま振り向く凛はニッと笑った。そんな二人に微笑み返していると、後から、
「そっか。だから二人とも召喚されてすぐにキスしたんだ! なるほど!」
納得したように手を叩き、大声でそんなことを言うイルゼ。
「な、何を言っているのですか!? 二人に説明したのはその後です!!」
急に必死に声を上げるエンダにはビビった。
これは……俺も説明しないといけない感じか?
まあ確かに、この二人が勝手に話を盛ったりされると後々面倒だろうし。
また朝に言った台詞を思い出しながら、横から割り込んだ。
「だから言っただろ? 『それは夢かどうか確認するため』だって」
「ホントにおかしいですよね、その考え!」
「うんうん! おかしい!」
「ちょっと待て、どこがおかしいんだよ? 兄妹でキスするのは当たり前だろ」
「はっ――――」
その時、辺りはしーんと静まり返った。
えっ、こわっ。何々? 怖いよ。
周辺の雰囲気の変化に気づいた。俺たちに、主に俺に視線が集まったことに。
「……なんか変なこと言ったか?」
「いや、私に訊かれても分からないよ」
「「「「「!?」」」」」
なんだよ、ここは?
次は凛に目線が向いた気がした。なにかおかしい……。
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