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俺たちを待っていたのだろう。制服を着た女性が立っていた。
「お待ちしておりました。ご案内します」
ゲームや映画でよく見かけるSPのような雰囲気を醸し出している人に、大きな部屋に連れてこられた。
部屋に入ると、冷凍庫のように冷え切った空気が肌を包み込んだ。
「さっむ……!」
長袖を着ているとはいえ、それでも身震いするほどだ。外に出て、日を浴びたいと本気で思った。
顎をカタカタ言わせながら、周りを見渡していると横から、
「あっ……つ」
同じ部屋にいるとは思えない行動をする凛の姿があった。
パジャマを脱いだのだ。
インナーを着ているものの、首筋や背中が汗でびっしょりになっていた。
「い……いもうと、頭おかしい……いや体調は、だいじょうぶ、なのかよ……!?」
「……ん、おにいちゃんこそ……なに、寒そうに、してるの……? あついのに、どうして……!?」
話が妙にかみ合ってない気がするし、行動も一致しない。
分かりやすい例えだと、俺が真冬にいて、凛が真夏にいるってとこか。どういうことだよ!? 意味わかんねえよ!!
イルゼとエンダは、俺と凛のようなことはしていない。この部屋に入る前と同じで、平然としている。一瞬、殺意を抱いた。
それはただの八つ当たりに過ぎない。分かっていても、それでもイラついてしまう。
どうやら、寒さのせいで思考能力が低下してしまったようだ。
腕を擦る力も、それ以上に立てなくなったことに驚きが隠せなかった。
「うっ、へ……?」
情けない声とともに尻もちをついてしまった。
これは……やばいな…………
自分のことに必死過ぎて、外部からの刺激が何一つ頭に入ってこなかった……
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