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『耐熱』『耐寒』『体力回復』
「「あっ……れ?」」
一気に体が軽くなり、さっきまでの寒さが嘘のようになくなった。
「いやぁ~、すまない。少し遅れてしまった」
呼吸を整え、パニックになっていた意識も落ち着かせた。そして顔を上げて、声の主を見る。
「おおっ、これはまた珍しい奴らだな。双子ってやつか」
暗闇から出てきた、バカデカい胸を持った女性が現れた。
「しっかし、双子なのに反応は真逆なんだな。いや、〝双子だから〟なのか?」
どう答えればいいのか分からないし、まず問いの意味が分からない。
復活した思考は、まだしっかりと目覚めてはいない。声を出すには、少しばかり休みが必要だな。
とりあえず、話だけでも聞こうかな。ま、所々聞き取れないかもしんないけど。
「多少は居るんだぜ、肌寒いだの少し熱いだの言う奴はなっ。だが、お前らはそれ以上だった! こりゃあすげえよ!!」
無邪気な子供のように、笑顔ではしゃぎ始める巨乳さん。
「死にかけるまで行くんか! 〝石〟の影響ヤべえな! なっなっ!! 早く触ってくれ見せてくれ!! なあ~に、熱くもないし冷たくもない。安心して、なっ!?」
うわっ、顔ちかっ、こっわ。なんなんだ、この人は……?
座り込んでいる俺と凛に襲い掛かってくる。物理的な意味じゃなくて、精神的な意味で。休もうとしてるのに、全く休めれない。
「…………!!」
ピコン! と効果音が流れてもおかしくないイルゼの閃いた表情。予想だが、俺の気持ちを察してくれたんだろう。
もしかすると、これも魔法の影響なのかもしれない。出会って間もない二人が心を通じ合うっていう、これこそ以心伝心……!
歩み寄るイルゼに期待を積もらせた。頼んだ、マスタぁ
「二人ともどうしたの? 顔色悪いけど」
「…………えっ」
素で驚いだ。さっきの表情は本当に何だったんだ? つか、今気づいたのかよ!
そう言えば、ご飯食べているとき、エンダが言ってたな。『イルゼはアホでバカな頭を使う魔術師に向かないバカっ娘』って。
言い過ぎだと思っていた。……思ってた。
「どうしたの?」
小首をかしげるイルゼを横目にエンダを見る。
向けられた目線に気づいたようで、俺と目を合わせた。
出会ってから、そんなに時間が立ってないし、儀式もしていない。イルゼより関係は浅い……だが、不思議と以心伝心ができる気がした。
(どうしよう、イルゼがバカなんだけど。どうしたらいい?)
イルゼとエンダは長い付き合いだと言っていた。イルゼの扱いには慣れているはず。なら、どうすればいいのか、分かるはずだ……!
希望を胸に宿らせた。
(ファイトですッ!)
いい笑顔で、グッとこぶしを握るエンダ。一瞬、雪まで溶かしてしまうと言われている、日本人で一番熱い人を思い出した。
できる~できる~♪ 君ならでき「ねえよ」
ボソッと呟いた。
なるほど、諦めたってことか。じゃあ、どうにもできねえじゃん。
何十年の付き合いのはずのエンダが『無理☆』って言ってんだ。諦めるほかねえよ。
何かが吹っ切れ、気持ちがいいと思った。
「いや、何でもねえよ」
自然と笑みが零れた。エンダにでもつられたんだろう。
フッと唐突に意識がはっきりしてきたことに気づいた。
回復したのに、満足しなかった。マジでこんなくだらねえ話で回復するなんて認めたくねえ!
まあ、回復したんならよかったじゃないか。……よかったなあ!
何も考えさせないように、思わせないように、勢いよく立ち上がろうと手を付いた。が、俺の右手は凛の左手を握ってることに気づいた。
俺が気が付く前に凛が握ってきたと思ったが、恋人繋ぎをしていた。……無意識って怖いなあ~。
「立てるか、凛」
「……う、うん。立てれるよ」
同じタイミングで立ち上がり、手を握り直した。
「仲がいいんだなっ。兄妹はやっぱ、仲良くしねえとなっ!」
ぱんぱんと手を叩きながら、大きな胸を上下に揺らすお姉さん――つぅか、酒飲んだ近所のばあちゃんみたい。
そんなことを思われているとも知らず、見た目年齢と精神年齢が違う巨乳さんは話を進める。
「あたしの前で(もっとすごい激しいことをしてくれたっていい)。まあ、するんなら、他の奴らには見せつけないことをお勧めするぞ。特に、ここのバイトの奴らにはな」
そ、そうなんだ……ってか、見せつけれるわけじゃないんだけど。
目覚めのキスをした時のイルゼとエンダの反応を思い出した。
確かに、そうだなって、日本にいたときでも人目を気にしてたけど(もちろん、人目を気にしない時だってあった)。
巨乳さんの台詞で聞き取れなかった部分があったが、深く触れない方がよさそうだ。
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