舞台はどうやら、中世ヨーロッパではないらしい。

5/23
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
 何も知らなかった純粋無垢な凛はどこへやら。ビッチのような台詞を甘え声で言う妹を遮って、乾いた笑いが自然と口から出た。  俺はまた妹の頭を撫で、学校に行くための準備を始める。  兄である俺、佐良秋斗(さがらあきと)は妹、佐良凛(さがらりん)の長い髪をとかし、凛にヘアゴムを渡した。  凛が髪を結んでいるところを横目に、ご飯を口に運ぶ。  いつも通りの時間に起きて、いつも通りの時間にご飯を食べて、いつも通りの学校生活――を送るつもりだった。  いや、この一日はそのいつも通りだった。  昼も夜も特に変わりはなく、ただいつも通りにまた普段通りの一日が幕を閉じた……  そうして、唐突に、合図など何もなく、俺たちの日常も終わりを告げた――――        ※ ※ ※  おかしいと感じたのは起きて数十秒後の時だ。  寝起きということもあるが。それでも、確認できた知らない人が二人も目の前にいるという現実をすべての機関が受け入れることを拒み、理解するまでタイムラグが生じた。  理性は『現実的にあり得ない』と意味を問い、  本能は『怖い』と震え、  心は『やばい』と理由も分からず、逃げようとし、  五感全ては『誰かどうにかして』と願った。  うす暗い中で確認できたのは、手を繋いではねながら喜んでいるように見える二人。     
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!