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バレンタイン
街中がいつもよりそわそわしてる。
通勤電車の中で緊張した顔の女子高生を眺め
可愛いなぁ、若いなぁ
なんてオッサンみたいなことを思いながらガタンゴトンと揺られる。
正直恋愛なんて学生同士の片思いのときが一番楽しい。
少なくとも、私は。
相手の気持ちがわからないときの不安やドキドキは
何物にも代えがたい。
社会人になるとそんな気持ちは上司にしかわかない。
憂鬱なものだ。
恋愛に関してもアラサーともなれば結婚の二文字が迫ってくる。
それでも今日くらいはチョコでも買って帰ろうかと思うあたり、私にもあの女子高生と同じ成分が少しはあるのだと僅かな希望を胸に会社へと向かった。
なんでこんな日に残業なんだ。
現在時刻は20:40
近くの百貨店は21時に閉まる。
急げば間に合う、か?
もうほとんど客もいない中、とりあえず可愛くラッピングされた箱をレジに持っていった。
なんとか間に合ったと一息つきながら帰路につく。
…塾帰りだろうか
今朝、電車で見た女子高生が遠くの方で男の子と手をつないで歩いてるのが見える。
良かったね、とニヤニヤしながら変に思われても困るので少しコンビニで時間を潰してから家に向かう。
玄関を開けると
おかえり、ご飯できてるよ
と、なんともよくできた彼氏が出迎えてくれた。
感謝しつつ食事を済ませ、風呂に入り、晩酌していると何か期待しているような顔が横目に映った。
そうだ、忘れていた。
はい、これ、とバッグの中から箱を差し出す。
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