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12月25日(火)
街は今年最後の輝きを見せている。今日が過ぎれば、あとは静かに正月を待つだけだ。
駅前の大きなクリスマスツリー、その下で松本希は待っていた。
「すまない。こんな日に…。」
「あ、い…いえ! 私も予定はなく暇だったので大丈夫です!」
昼休みに松本希に連絡をした。
彼女は俺の仕事終わりに時間を合わせてくれると言った。
「どこか静かなバーにでも…。あ…喫茶店の方がいいね。コーヒーは飲める?」
危ない。彼女は未成年だった。
駅から離れた喫茶店に入る。考え事をするときにはよく使う店だ。
ここは客も少なく、店長も良い意味で客に無関心なので気に入っていた。
カラン
店長が一瞬こちらを見て、すぐに手元の本に目を戻す。
周りを見渡すと、今日は客がいないようだ。丁度良かった。
奥、大丈夫ですか? という声に店長は静かに頷く。
いつも利用している奥の席。
ただでさえ世間から離れたような店内で、最も別世界のようなその席に着いた。
しばらくすると店長がコーヒーを持ってくる。
ここにはメニューはない。店長は客が来れば黙ってコーヒーを出す。
会話は一切なくクラシックだけが流れる空間。俺はそんなところが気に入っていた。
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