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いつだったか、あの人にマジックを見せていた時だ。
「貴志くんはすごいなぁ。何でもできちゃうんだもん。
もしかして…人も創れるんじゃない?」
当時、思春期だった俺の琴線にその言葉は響いた。
俺は自分の考えを何度も力説した。
あの人はいつもの笑顔で、すごいねぇと笑っていた。
…甘酸っぱくも、あまり思い出したくはない思い出だ。
「な…なぜ、君がその言葉を…?!」
若干、顔が赤くなる。この年になって聞くと色々とキツイ。
「だって…私は『三浦早紀』だもん。」
あの人とは似てはいないが、彼女は優しく微笑んで答えた。
その顔を直視できなかった。
「一方的にすまない。今日はここまでにしてくれないか。少し頭の整理をさせてくれ。」
頭が追い付いていない。ひとつひとつ整理する必要がある。
「うん。仕方ないと思う。死んでいた間の時間を少しずつ埋めていこう?」
彼女は悲しそうに、でも嬉しそうに微笑んでいた。
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