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石造りの建物が並ぶ美しい港町。
長い航海を経た寄港地で船をこっそりと抜け出し、兄と妹は異国の広場を歩いている。
広場には多くの店が軒を連ね、珍しい品や美味しい食べ物にはしゃぐ妹に兄は、
「ねえ、もう帰ろうよ」
「えーっ、まだ来たばかりじゃないの」
「早く戻らないと船のみんなが心配するよ」
「大丈夫よ。いざとなればあたしがお兄ちゃんの分まで叱られてあげる」
けろりと答えてホットドッグを頬ばる妹。うーん、美味しい!
「そうはいかないよ~」
両親は船を降り、大切な用事で出かけている。
船でおとなしく留守番するよう厳命されたのに、抜け出したのがバレたらと思うと、兄は気が気ではない。
水軍の長を務める母は普段は大ざっぱ……いや、大らかだが、本気で怒ると、むちゃくちゃ怖い。
妹はノンキにかまえているけど、絶対に後で二人まとめて叱られた上、甲板掃除が待っているに決まっている。
「だったらお兄ちゃんだけ先に戻りなさいよ。久しぶりの街だもん、あたしはもっと楽しんでいきたいの」
両手をポケットに突っ込んだまま、兄は少し強い口調で、
「兄として妹をひとり置いて帰るなんてできないよ」
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