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「へイユー、いい年をしてなんて顔をしてるんだい」
年齢不詳の「永遠の不良少年」風ファッションに恥ずかしげもなく身を包んだあんたに言われたくないわ、と思わず睨み返した。
「オーケー、オーケー。ミーにまかせておいてくれ」
昭和のドラマに出てきそうな気障な業界人キャラみたいな話し方が胡散臭さを通り越してまるでネタだ……本当にこいつに頼っていいのか?そもそも一般常識を備えたまともな人間として接して大丈夫なのか?
「ノー、ノー、無問題(モーマンタイ)ね。マエストロ、頭冷やすのにモアタイム、必要ね。ユー、言ってることわかります?」
自分の人生でかつてこれほど会話のたびにイライラさせてくれる人物に会ったことがあったろうか。ああ、全てを犠牲にして決死の覚悟で練習に打ち込んで、やっとリハーサルと本番に漕ぎ着けたってのに気づくと周りにはこんな人間しか残っていない。
「ですが、ミスター・チャン」
「ユーアンド、オーケストラもクールダウン、必要ね。一時間きゅうけーい」
オケへの指示は自分の仕事だ、と言い返したいのをやっとこらえてマツイは外の空気を吸いに出ることにした。気分転換が必要なのは本当かもしれない。ふらりと外に出たマツイはふらりと近くのコンビニに向かったーー別に買い物がしたかったわけではないが。そこで衝撃的な光景を目にした。
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