☆女王陛下のお気に入り☆

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呆然と見つめる俺に郷田は少し照れたように笑うと、よいしょと言いながら俺を立たせてくれた。 パンパンと体中のホコリを払ってくれる。 優しい。 「図書室で待っててと言いましたが、まさかドアに背もたれしてるとは思わなくて、頭打ってないですか?大丈夫ですか?」 「あ…うん。ありがとう」 「そうですか。なら良かったです」 そう言ってニコリと笑う顔に少しだけデジャヴ──。 「あ。………あぁ!!!お前!入試の時の!?」 「はい。あの時の本当にお世話になりました!無事に合格出来て柚川に入れました!」 そう。郷田 拳生は3月の入試の時に校内で迷子になっていた中学生だった。 ピョコン!とうさぎが跳ねるようににこにこ笑う郷田にこっちまで嬉しくなる。 その日俺は風紀委員長として先生方から頼まれて入試の手伝いをしていたのだった。 そこに今にも泣きそうなこいつが現れて慌てて試験教室まで連れていったのだ。 だって、もう入試は始まっていたのだから。 本当なら遅刻厳禁だが、俺を見て鼻血出してぶっ倒れたと言ったら何故かGOサインが出て、10分ロスではあるけれど、その教科も受けれるようになったのだ。
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