第一話 とある記者の疑問

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 気にしてもしょうがないから、さっさと帰る事にしよう。今日は、5階では私が最終だったので、鍵を守衛に預けて帰る事になる。  エレベータは節電という事で、この時間になるとかなり暗くなっていて、奥が少し光っている程度だ。  階のパネルも行ける階だけが光っている。1階を押して、閉まるボタンを押す。  少しだけ”ヌルっと”した手触りがして気持ち悪かった。  エレベータは3階で一度止まった。ドアが開くが、誰も乗り込んでこない。上に行くのを見て、諦めて階段で移動したのだろう。  エレベータを降りて、守衛さんがいる場所まで移動する。 「お!今日は、お嬢が最終か?」 「おじさん。お嬢は辞めてくださいよ」 「すまん。すまん。はい。鍵は確かに預かった。ここにサインしてくれ」 「はい」  私がサインした横におじさんが判子を押して、時間を書き込む。 「そう言えば、おじさん。天上階、誰かお客さん?」 「ん?お前さん以外もう誰もいないぞ?」 「え?」 「どうした?」 「ううん。なんでもない。3階の人も遅くまでいたのですね」 「3階?」 「うん」 「お嬢。ちょっと疲れていないか?()()()()()だぞ?来週、お前さん達が引っ越すのだろう?」 「え?だって、エレベータ・・・」 「何かの勘違いじゃないのか?」     
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