第一話 とある記者の疑問

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 おじさんはエレベータの移動記憶を見せてくれた。  このビルは、言えばログをこうして見せてくれる。  確かに、エレベータは1階から5階まで直通で来て、5階から1階に向けて一度も止まらないで来ている。  そして、奥の監視カメラの映像は、私が最終だった5階は当然だが、3階も6階も真っ暗な映像が流れている。赤外線カメラの映像でも誰も居ない事が確認できている。 「・・・。そうみたいだね。温めていた記事がダメになっちゃって気分が落ち込んでいたのかもしれない」 「そうか、気落ちするなよ」 「うん!大丈夫。違うスクープを狙うよ!」 「おぉさすがはお嬢。スクープが取れたら、おごってもらおうかな」 「いいですよ!出前のお寿司でも差し入れしますよ」 「そりゃぁ楽しみにしておくよ。気をつけて帰れよ」 「はぁーい。お疲れ様」 「あぁお疲れ様」  本当に私の勘違いだったのだろうか?  3階で開いたときに、何かが腐った匂いと一緒に血のような匂いがしたけど、あれも気のせいだよね。 ”やば。終電!”  時間的にはまにあいそうだが、少し急ぎ足で駅まで移動する。  明かりがついていて少しホッとする。 ”イタっ!”  ん?誰かにぶつかった?  左手に違和感がある。左手を見る。  え?  なにこれ?  なんで?     
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