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「人はいつか死ぬか分からない。爺さん、婆さんになるまで生きることができるって思っているお前らの方が俺からしたら異常だ。大体、お前ら全員、人が死んだくらいで騒ぎすぎだと思わないのか?」
「は?」
「結局、人間というのは殺し合いを求める生き物ということだ。でも、これだけ殺しても心が痛まないのはやはりおかしいのか。だったら、なんで痛まないのかぜひ知りたいな」
「妹には夢があった。ファッションデザイナーだ。自分の作る服でいろんな人の人生を彩りたいと言っていた」
「それは気の毒だったな。可哀・・・・そうだな?今なら少し後悔できそうだな。そうか、俺は心が痛みたくて人を殺していたのかも知れないな」
和夫の横に座っていた彼の母が飛び上がり黒川に襲い掛かろうとした。すぐに取り押さえられた母は黒川に感情のすべてを吐き出していた。和夫はそんな母親を見て、少し冷静になった。母が襲い掛からなければ自分が襲い掛かっていたと和夫を確信していた。
「君の犯行の残虐性、君のまるで後悔のないその態度、君には死という罰ですら軽いように見える」
裁判長は路上に転がるゴミを見るような眼で黒川を見下ろした。
「殺すなら早く殺してくれよ。裁判長。この世にも飽きてしまったからな」
黒川は薄気味悪い笑みを浮かべながら裁判長を見つめている。
「死んでも構わないと?」裁判長が聞く。
「言っただろう。俺はあんたらとは違う。いつでも死と手を取り合って生きてきた。今更。死と一緒になるくらいどうってことない」
「なるほど」裁判長が独り言をつぶやくように言った。そこから長い沈黙が流れた。裁判官たちは目で互いの意思を確認しているように見える。
「では、判決を言い渡す」
裁判所の空気が次の一言を緊張しながら待った。
「黒川登也に更生刑を申し渡す。これが最終判決だ」
驚愕の声が裁判所を支配した。放心した遺族の顔は瞬間冷凍でもされたかのように静止した。
「更生刑?なんだ、それは?」黒川は間の抜けた声で裁判長に聞いた。
「この世界はあまりに犯罪が増え過ぎた。今、人類史上最悪の犯罪の時代が来ているといっても過言ではない。だが、一番の問題は犯罪の多様化や凶器の発達ではない。お前のような人間を人間とも思わない心を持たない人たちが増え始めていることなのだ」
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