第002話 動揺

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 後宮から本殿へと続く長い廊下を、エリー王女は女官であるマーサと六人の侍女を引き連れて歩く。重厚な扉の前に着くと、マーサが前に進み出て扉を叩いた。本殿側より鍵を外す音がした後、両開きの扉が内側にゆっくりと開かれる。  エリー王女の胸は激しく鳴り響き、震える手足を何とか抑えるのに精一杯だ。 ――――怖い。  これが今の正直な感想だった。あんなに楽しみにしていた外の世界だったが、今は直ぐにでも後宮に戻りたいと思っていた。  扉の向こう側では、側近と思われる二人が片膝をついた姿勢で待っている。エリー王女が震える足で一歩本殿へと足を踏み入れると、エリー王女から見て右側にいる黒髪の男がそのままの姿勢で挨拶を始めた。image=512864886.jpg
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