第002話 動揺

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「初夏の候、王女殿下ご誕生の日をお慶び申し上げます。王の命により、本日この時より王女殿下の第一側近としてお仕えさせていただきます。我が名は、アラン・ラッシュウォールと申します」 「第二側近として王の命を受けたレイ・ラッシュウォールと申します」  続いてふんわりと風になびく色素の薄い茶色の髪をした男が挨拶をした。  同じ苗字ということは兄弟なのだろうか。少しくらい二人の情報を聞いておくべきだったと今更ながらにエリー王女は後悔した。  どうして良いかわからない。  エリー王女は素早く後ろを振り返りマーサの顔を見ると、マーサが小さく頷くのが見えた。エリー王女は意を決して正面を向き、姿勢を正し小さく喉のつかえを取る。 「面をお上げください」  一息で告げると、二人は同時に面を上げた。彼らは想像していた以上に若く、整った顔立ちをしている。  父親以外の男性を見たことがないエリー王女は、心臓が大きく跳ねた。目の前に組んだ手を力強く握りしめると、手の中でじんわりと汗が滲む。  逃げたい気持ちを抑えながら二人を交互に見据えた。image=512864889.jpg
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