2月14日

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仕事から帰ったらテーブルの上に箱が置かれていた。いつもご飯の支度をして待ってくれている妻の姿は無い。 「何だろ?」 俺は片手でネクタイを外しながら箱を手に取った。 少し古びた箱だ。裏返して見てみる。消えかけた文字がある。俺は目を凝らして読もうとした。 「昭和53年 雅治…。」 父の名だ…。俺は父親の記憶が全くない。俺を抱っこして嬉しそうに笑っている写真だけは見た事があるが…。 俺は慌てて箱を開けて中を見た。写真が少しと手紙が入っていた。 写真を見ると父親と俺と母親が幸せそうに写っていたり父親と俺だったり母親と俺だったり、どれも両親は幸せそうな笑顔だ。 「母さん若いな。」 俺は苦笑しながら言った。 そして手紙を開けた。 母さんへ いつも美味しいご飯感謝しています。 宝物の光と俺を会わせてくれた事を何よりも感謝しています。 本当に俺は世界一の幸せ者です。 これからもずっと3人で楽しく幸せで過ごしていけたらどんなに幸せか…。 母さんと光の笑顔を見ていると、ふとそんな事を考えてしまいます。 ごめんな…。 本当にごめん。 癌が見つかって1ヶ月。 本当に俺は母さんと光と一緒で幸せだ。 後何日、一緒に過ごせるんだろう…。 後何日、光の成長を見ていられるのだろう…。 生きたい…。お前達と一緒に生きたい。 本当にこの幸せな時間を過ごさせてくれて心から感謝します。ありがとう。 裕美子。光をずっとずっと愛しています。 光の事をよろしく頼みます。 雅治 所々、涙で滲んでいる。 俺も勝手に涙が出ていた。2枚目の手紙を開く。 光へ 父さんの大切な光。 母さんとは仲良くしているか? 父さんが大切にしてやれなかった分、母さんを大切にしてやって欲しい。 光の母さんは強い人だ。父さんが病気になってしまった時も最後まで笑顔を見せて安心させてくれた。 だけど、夜中にこっそり何度も何度も声を殺して泣いているのを父さんは知っていたんだ。 母さんは決して弱音を吐かない。だから、たまに無理していないか見てやって欲しい。 本当は父さんが母さんを支えないといけなかったんだが、それができなくなってしまったから、光にお願いする。
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