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球技大会の後、下駄箱に着いた瞬間、真里花が声を上げた。
「あっ!」
「えっ、なに?」
「スマホ忘れたっ!」
「え、どこに?机?」
「多分…ホームルームの時に机の中で弄ってたから…」
「バカ…」
「ちょ、ついてきて!」
腕を掴まれて、教室までの廊下を進む。と、突然、彼女が立ち止まった。後頭部に、顔がぶつかる。
「ブッ…なに、」
「…アレ、告られてるよね?」
真里花が指差した先、2組の教室。見えたのは、クラスの女子と哀川の後ろ姿。明らかに、そういう雰囲気だ。
彼女の顔を見ると、ニヤリと微笑って。抜き足差し足で、教室の扉に張り付いた。
「なっ、何してんの…!」
「シーッ!」
人差し指を唇に当てる彼女。そうっと隣に腰掛けると、中の会話が聞こえてきた。
「ーーー…と思ってて、良かったら…、付き合って下さい…!」
真里花と顔を見合わせる。彼女は今にも笑い出しそうな顔をしていたけど、私は内心複雑…いや、それを通り越して泣きそうになっていた。
「…ごめん、付き合えない」
哀川の声が聞こえて、少しホッとする。横で真里花が「哀川のくせに生意気な」と呟いていた。
「…彼女、居るの…?」
「いや、彼女は居ないけど…」
ーーー好きな人、居るから。
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